ラベル 深海 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 深海 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

チョウチンアンコウの歪んだ愛


今回お届けするのは、歪んだ愛。
昼ドラのような世界です。
チョウチンアンコウの一種の、
変わった生殖活動をご紹介します。

オスとメスで大きさが違う!

今回の主役は「ミツクリエナガチョウチンアンコウ」。長い名前ですね・・・(汗)。全部で16文字。魚類の中で最も長い和名のようです。見た目は、なかなかの強面ですね。分厚くてつんと上を向いたような唇。ざらざらしてそうな肌の荒れ具合。うーん、不気味です。ミツクリエナガチョウチンアンコウには、オスとメスの違いがはっきり分かる特徴があるんです。それは体長です。メスは40cm近くまで成長するのに対して、オスは4cmほどまでしか大きくならないんです!


出会いは奇跡!歪んだ愛の始まり

広大な深海の世界。同じ仲間の異性と出会う機会は、そうあることではありません。オスがメスを見かけたら、「このチャンスを逃すまい!」とメスの体をガブリ!鋭くかみ付いて離しません。そしてここから、歪んだ愛が始まります。オスの愛情が強すぎて、オスの唇とメスの皮膚が融合。血管までもがつながり、栄養も共有するようになるんです!まさに「ひも」状態ですね!



ひもになったオスの運命やいかに?

メスの体に寄り添い、ひもになってしまったオス。その後の運命はどうなってしまうのでしょうか?目はしだいに小さくなり、やがて消滅。内蔵すら退化してなくなってしまうんです!一方で、メスの卵巣が発達するにつれ、オスは精巣だけが異様に発達。オスは子孫を残すためだけの存在になってしまいます。やがて子孫を残し終えると、オスはメスの体内に吸収されてしまい、完全に同化してしまうんです!


寄り付くオスは拒まない!逆ハーレム状態

オスは深い愛情とともに己の身を捧げるにもかかわらず、メスはめちゃめちゃドライ。自分を気に入ってかみ付いてくれたオスは、次々と受け入れます。やがて、メスの体には複数のオスがくっつきます。まさに逆ハーレム状態!ミツクリエナガチョウチンアンコウの世界では、一妻多夫制なんですね。


ミツクリエナガチョウチンアンコウの、独特の雌雄の関係。いかがでしたか?私たちの身近な恋愛とは、かけ離れた世界かもしれません。でも過酷な深海の世界では、確実に子どもを残すために、必要な方法だったのかもしれません。(福田大展)

ミツクリエナガチョウチンアンコウ

体長はメスが40cmなのに、オスはわずか4cm。
オスは、メスを見つけると体にガブリと噛み付きます。
すると、オスの唇とメスの皮膚が融合。
血管までもがつながり、栄養もやりとりできるようになります。
まさに「ひも」状態!
寄生したオスは徐々に退化していきます。
目が小さくなり、最後には消滅。内蔵もなくなります。
一方で、メスの卵巣が発達してくると、オスの精巣だけが異様に発達。
オスは子孫を残すだけの存在になります。
そして子孫を残した後、オスが辿る運命は・・・
メスの体内に吸収されて取り込まれて、同化してしまいます。

深海は広くて暗いので、オスとメスが出会うのが大変。
出会いが少ない。
1回出会ったら、何が何でもゲットしないとダメなんです。
過酷な世界。
確実に子どもをつくるために、寄生という方法を選んだ。

深海生物の進化

発光

太陽光が届かない暗闇の世界。光を上手に使いこなす進化

①影を消す(カウンターイルミネーション)
  200〜1000mの深海魚のほとんどが、腹に発光器を備えている。
  完全に暗黒の領域となる1,000m以深では、
  カウンターイルミネーションの効果が期待できないためか、
  腹部の発光器はあまり見られない。


②獲物を探す(サーチライト)


  【オオクチホシエソ】眼の下に赤色の光を放つ発光器。暗視野スコープ
   深海では青い光が遠くまで届くので、青白い発光器を持つ生物が多い。
   しかし、オオクチホシエソはは赤い光を放つ発光器を備えている。
   さらに自らの眼も、赤色を感じやすいように進化。
   “赤外線照射装置”と“赤外線感知システム”を備えている
   赤外線の光は、他の深海生物には見えにくい。
   赤い光で、敵に気づかれないように忍び寄り、襲いかかる。
   青い発光器も持っていて、ハイビームのように遠くを見るのに使う。   
   クロロフィル(葉緑素)を持っている。
   クロロフィルをもつ細菌と発光バクテリアが共生し、
   赤い光を放つことができると考えられている。

③獲物をおびき寄せる(ルアー)
  

  【ムネエソ】口の中が光る
   口の中に多数の発光器を持つ。
   光に寄ってきた生物を、えさとしてそのまま食べてしまう。
   敵に見つかると、体をくねらせてうろこの角度を変え、
   敵の目に届かないように光を乱反射させて、姿を見えなくする。


  【Thaumatichthys axeli】
   チョウチンアンコウの仲間
   飛び出した上顎の先に、光るルアーをぶら下げている。
   大きな口を開けたまま、ルアーを光らせます。
   餌となる生物が光に集まってくると、
   ルアーを口の中に折り曲げて、誘い込みます。
   口の中に触れた瞬間、口を閉じて生物を閉じ込めます。
   


④驚かせて隠れる(防御・目くらまし)


  【ガウシア】 青色の発酵液を放ち、数秒後に明るく閃光する。
   動物プランクトン。
   発光タンパク質が、 海水中のNaイオンと反応して発光している。

⑤仲間を見つける(コミュニケーション・求愛)
【ミツマタヤリウオ】
雌雄で眼後部の発光器の大きさが違う。
雄が大きく、雌が小さい。雄が求愛に使う。
雌の体長は50cmほどで、雄は10cmにも満たない。
雄は雌の5分の1ほどの大きさにしか成長しない。
雄は成魚になると、餌をほとんど食べなくなる。
雌を探し、生殖だけにすべてを費やす。
幼魚のころに変わった形態をしている。
目が体長の半分ほども飛び出ている。
成長するにつれて、コイル状に巻かれる。
成魚になるころには、顔にくっつく。
また、腹から糸のように消化器官が伸びているが、
これも成長するにつれて、体内に収納される。

感覚

わずかな光をとらえる進化、光以外の感覚を研ぎ澄ませる進化。

①大きな眼
【オオメマトウダイ】
 目は頭の長さの半分と大きい。

【オオメソコイワシ】

②小さく退化した眼
【ユノハナガニ】

③望遠鏡のような筒状の眼

【デメニギス】
 水深400〜800m。
 眼が大きく、「管状眼」と呼ばれる筒状になっている。
 緑色の球状部分が、円筒形の高感度の眼。
 頭が透明なドーム状の膜で覆われ、内部は液体で満たされている。 
 眼の軸を回転させ、前から真上まで視点を変えられる。
 眼を真上に向け、わずかな太陽光によってできる獲物の影を探している。
 眼のような場所にあるものは、鼻に相当する器官。
 お腹に発光器を持つ。

【ボウエンギョ】

④長い柄の先の眼(少ない動きで視野を広げる)

【ミツマタヤリウオの子ども】
眼が長い柄の先にある。
眼が左右に飛び出している。
体が大きくなると、柄の先が縮んで短くなり、
眼の位置に収まる。
眼が長い理由は、周囲をよく見るためという説があるが、
詳しくは分かっていない。

⑤光を感じる

⑥光を感じる感光板(網膜が発達)

⑦体の表面に大きな孔(獲物の振動を見逃さない)
【オオアカクジラウオ】

⑧長いうろこ(振動や接触に敏感)

【ヒレナガチョウチンアンコウ】
糸のように長くした、ひれのすじを漂わせる。
体のところどころに生えている糸状のものは、側線の感覚孔にある皮弁。
レーダーのように水の流れを敏感に読み取り、
えさを捕まえるのに役立っていると考えられている。
頭に立派な角が生えている

⑨長いひげ(振動や接触に敏感)
⑩大きな鼻
⑪磁場を感じるセンサー(ヘラザメ)

口・胃袋・腸

深海はえさに乏しい。確実に捕獲するために発達した。

①口を大きく開ける

【ホウライエソ】
 体長35cm。水深500〜2500m。
 せきつい骨がバラバラに離れる。
 頭を激しく動かして、大きな口を開ける。
 そのときに、大きな獲物を口の中に通すため、
 心臓や腹部大動脈、えらを後ろ下方に押し下げられる。
 するどい牙を持つ。
 牙に大きすぎる獲物が刺さったときに、飲み込めずに餓死することもある。


【ダイニチホシエソ】
 せきつい骨がバラバラに離れる。
 頭を激しく動かして、大きな口を開ける。


②大きな牙を持つ
【ホウライエソ】

③袋のような口を持つ
【フクロウナギ】
 大きくて伸び縮みする、袋のような口を持っている。
 口の長さは頭蓋骨の10倍ほど。口の上に頭蓋骨が乗っている感じだ。
 大きな口を開けたまま、体を垂直に立てて浮上。
 小さいエビなどを誘い込み、口を閉じて獲物を一気に飲み込む。
 尻尾の先端に発光器があり、
 ルアーのように獲物をおびき寄せている可能性がある。
 http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=INJ5Tk7Nbi4

④胃袋を大きく広げて丸飲みする

【フウセンウナギ】
 英名は「Gulper」“丸飲みするもの”と呼ばれています。
 腹の筋肉が柔らかく、胃袋を大きく広げられる。
 丸呑みした餌を収められる。
 腹が飲み込んだ魚のような形になり、風船のように膨らむ。
 尻尾の先に発光器を持つ。

【クロボウズギス】
 英名は「Deepsea swallowers」“深海の大食漢”。
 自分よりも大きな魚を飲み込むことができる。
 腹が飲み込んだ魚のような形になる。

⑤鳥のくちばしのような長い口を持つ
【シギウナギ】

⑥長い腸で消化と吸収の効率を高める
【ホウキボシエソの子ども】
 体長の5倍ほどの、長い腸をぶら下げている。
 腸が体の外に露出している。
 腸の表面積を広くして、消化と吸収の効率を高めている。

運動

活発に動き回るのではなく、じっと待機して獲物を待つ

①長いうろこで三脚のように体を支える
②長いひげ
③成長せずにエネルギーを節約

防御

①肛門から墨を出す(アカナマダ)
②光る液を出して驚かせる
③体をとげで覆う

色

①赤(赤はわずかな太陽光の青を吸収して黒く見えるため)
②黒(深海魚の9割は黒い。闇に紛れるため。影は腹部の発光器で打ち消す)
③紫
④透明

発音



発電

シビレエイ科やガンギエイ科が発電する。
攻撃や防御、自分の位置を知る、コミュニケーションなどに使っている。
一度放電すると、充電にかなりの時間が必要。
シビレエイ類は、体の左右にそら豆状の大きな発電器を持つ。
起電力は50〜80ボルト、電流は40〜50アンペアほど。
ガンギエイ類は尻尾の両側に、細長い発電器を持つ。
起電力は数ボルト。

【ヤマトシビレエイ】
【スベスベカスベ】
 ウロコがほとんどなくスベスベしているところから命名





繁殖


浮き袋

高水圧、水圧の変化に耐える進化。

①浮き袋をなくす
②グアニン結晶で浮き袋を覆って頑丈にする
③中身を気体ではなく、脂肪やワックスに置き換える



オオグチボヤ


概要

水深300〜1000m。体長10〜15cm。
海水の流れる方向に向かって、パックリと口を大きく開けて待ちぶせ。
大量の海水を飲み込み、えらでプランクトンをこしとって食べる。
植物プランクトンや動物性プランクトン、小さなエビを食べる。
えさが口に入ると、ガバッと口を閉じて閉じ込める。
こしとった海水は、吐き出す。
大きな口は入水孔で、その上にあるものが出水孔。
マリオのパックンフラワーに似ている。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=gYcB180X0Tk

マッコウクジラ


地球上最大の無せきつい動物「ダイオウイカ」が、
世間をにぎわせているようなので、
その最大のライバルである「マッコウクジラ」に
注目してみたいと思います。

 大型バス2台分の長さ!

丸く突き出た、巨大なおでこが愛らしいですね。体長は大きいもので18m。歯を持つ動物の中では、地球上最大の生物です。町中を走る路線バスの長さが9mほどなので、約2台分の大きさもあるんです。

潜水の天才!秘密はおでこの中に!?

マッコウクジラは潜水が大得意。水深1000mほどまで潜れるんです!その鍵を握っているのが、大きなおでこ。おでこの浮力を調節して、時には「おもり」、時には「浮き袋」の役目を果たしているんです!


おでこの中には、一体何が入っているのでしょうか?その大部分には、「脳油」と呼ばれるものが詰まっています。深く潜りたいときには、鼻の穴から冷たい海水を入れて脳油を冷却。脳油を固めて「おもり」にします。一方、海面に上がりたいときには、脳油を血液で温めてもとの液体に。浮力を大きくして「浮き袋」としておでこを活用しているんです。

息継ぎなしで1時間海の中

マッコウクジラは一旦潜り始めたら、1時間以上も呼吸をせずに泳ぎ続けても平気なんです!そんなに深くまで潜って、息苦しくならないのでしょうか?マッコウクジラは、酸素を貯めるタンパク質「ミオグロビン」が、全身の筋肉にあるため、大量の酸素を蓄えられるんです。

音で深海を“見る”

マッコウクジラが深くまで潜れることは分かりましたが、深海は太陽の光が届かない暗闇の世界。深海の様子は見えているのでしょうか?

「パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!」

このサイトの音を聞いてください。


マッコウクジラは、深海で「クリック音」と呼ばれる音波を出しています。その跳ね返ってきた音を聞くことで、獲物を探していると考えられています。音で深海を“見ている”のです!


何のために深海へ?

マッコウクジラが深海に行くことは分かりましたが、一体何のために潜っているのでしょうか?実は、深海のイカが大好物。体が大きいだけあって食欲旺盛で、1日に1トンものイカを食べるそうです。もちろん、ダイオウイカにも目がありません。2体の戦いを見た人はまだ誰もいませんが、マッコウクジラの口の周りに、ダイオウイカの吸盤に吸い付かれたと思われる痕跡が、確認されています。体長18m同士の決闘。いつか見てみたいですね。(福田大展)

深海生物の驚くべき光の使い方①



深海は太陽の光が届かない「暗闇の世界」です。
確かに、そうなのですが、実際は光であふれています。
光を放つのは、深海の生物。
「光」を巧みに操り、「闇」を支配しようと、
驚くべき進化を遂げているのです。

あなたは深海生物。どう光を使いますか?

想像してみてください。あなたは暗闇に生きる、深海生物です。光をどう使って、えさを確保し、敵から身を守りますか?深海生物の5つの光の使い方を、2回に分けて紹介します。

赤外線を使いこなす“特殊部隊”


最初の光の使い方は、闇を照らして獲物を探す「サーチライト」。紹介する生物は、深海の“特殊部隊”「オオクチホシエソ」です。深海では青い光が遠くまで届くため、青白い発光器を持つ生物が多いです。しかし、オオクチホシエソは敵に気づかれにくい「赤い光を使いこなす」のです!軍隊が使用する赤外線暗視スコープのようですね。眼の下に赤い発光器があります。さらに、自らの眼も赤色を感じやすいように進化させ、“赤外線感知システム”も備えています。

光は甘い罠


2つ目は、光で獲物を呼び寄せる「ルアー」のような役割です。紹介するのはチョウチンアンコウの仲間の「Thaumatichthys axeli」です。この魚は、飛び出した上あごの先に、光るルアーをぶら下げています。大きな口を開けたまま、ルアーを発光。餌となる生物が光に集まってくると、ルアーを口の中に折り曲げて、誘い込みます。怖い!生物が口の中に触れた瞬間、口を閉じて閉じ込めて食べてしまいます。

時限爆弾で目くらまし


3つ目は、敵を光で驚かせて逃げ隠れる「目くらまし」です。紹介するのは、プランクトンの一種の「ガウシア」です。これまでに紹介した光の使い方は「攻撃」でしたが、今回は「防御」に使います。ガウシアは、敵に襲われそうになると、青く光る液体を噴出。勢い良く放たれた液体が、ゆっくりになり始める約2秒後、突然、爆発したかのように閃光を放ちます。まさに“時限爆弾”。敵が光に驚いているすきに、身を隠します。

「深海のエイリアン」(2:46)(Youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=1xkFtv3d8MA

今回は、深海生物の光の使い方を3つ紹介しました。深海生物がすごすぎて、私は深海で生きていける気がしません(笑)1日で食べられてしまいそうです。しかし、まだまだ驚くべき光の使い方があるんです。次回もお見逃しなく。





④ 仲間を見つける

4つ目は、暗闇の中で仲間を見つける「コミュニケーション」です。


⑤ 影を消す

5つ目まで分かった人は、想像力が豊かな人ですね!
「深海は太陽の光が届かない」と言ったのですが、
実は人間の目では分からないほどの、微かな青い光が届いています。


スカシダコ


スカシダコ(Vitreledonella richardi)
体長:45cm 水深:200〜2000m
進化:敵に見つからないように、体を透明にする

驚くほどの透明度の高さから「ガラスのタコ」(Glass Octopus)と呼ばれる。
このタコには硬い殻も毒もなく、格好の獲物。
いかに、敵から姿を見られないかが大切になる。
からだのほとんどが透明だが、消化管だけは影が浮かび上がる。
縦の姿勢を保ち、影ができるだけ小さくなるように努めている。


無理なダイエットは禁物!絶食1500日!



 1500日以上、何も食べていない生物がいる。三重県鳥羽市の鳥羽水族館にいる、深海生物「ダイオウグソクムシ」だ。周りの心配をよそに、きょうも絶食を続けて水槽を優雅に歩いている。


 ダイオウグソクムシは、世界最大のダンゴムシの仲間。体長は20~40cmで、大きいもので50cm近くにもなります。メキシコ湾やカリブ海の海底約170~2000mに生息しています。複眼は3500個の個眼からできている。海底に沈んだ動物や魚の死骸を食べることから「深海の掃除屋」の異名を持つ。大型の割に小食で、飢餓に強い。エサが少ない環境で、巨大に育つ理由は分かっていない。


 鳥羽水族館では、3匹を飼育している。絶食中のダイオウグソクムシは、2007年9月にメキシコ湾からやってきた。体長29センチ、体重約1kgの雄。「No.1」と呼ばれている。2009年1月2日にアジ1匹を食べて以来、餌に見向きもしなくなった。イカの足やサンマ・・・。いろいろ試したが、口にしなかった。

絶食は5年目に突入!
→なぜ「No.1」と呼ばれているのか
→エサを食べさせる努力

 Youtubeにある動画「1432日目の挑戦」では、えさやりを担当する飼育員の苦労がうかがえます。この動画は、ある日のえさやりの光景を映したもの。最初にサンマを水槽の中に落とします。「あっ!何かが落ちてきた!」てな感じで、のしのしサンマに近づいていく!が・・・食べない。しびれを切らした飼育員が、ダイオウグソクムシを「がしっ」とわしづかみし、口をサンマに無理矢理押し付ける!が・・・食べない。
 まだまだ、めげません。次に取り出したのはブリの切り身。今度は自らブリに近づいていきます。ブリの上に足をかけた!今度こそ!が・・・ブリを踏みつけてそのまま通り過ぎてしまいました。飼育員は水槽の中に視線を落として、ため息とともに頭をうなだれます。残念!

動画「1432日目の挑戦」





<人>飼育研究部・森滝丈也 さん

黒スケはどのように鎧をまとったか




 硫化鉄の“鎧”をまとった深海の巻貝「スケーリーフット」。前回のブログで、硫化鉄をまとって黒い色をしているスケーリーフット(黒スケ)だけでなく、硫化鉄を持たずに白い色をしているスケーリーフット(白スケ)もいるという衝撃の事実が明らかになりました。しかし、この2種類は遺伝子的にはまったく同じ。


いったいなぜ黒スケだけが、鎧をまとっているのでしょうか?

ユノハナガニ


【特徴】
 水深420〜1380mの深海の、熱水噴出孔の近くに生息している。和名は「ユノハナガニ」。体の色が白く、温泉に舞う湯の花にちなんで名付けられた。学名は2000年に「Austinograea yunohana」とされたが、2007年に「Gandalfus yunohana」に改められた。眼の退化が進んでいて、目と頭部を繋ぐ組織「眼柄」を動かせない。角膜は皮下に埋もれることなく見えるが、色素はない。雌の方が雄よりも一回り大きい。
→眼柄について調べる

「ユノハナガニの視覚器官は白色で一部が少しだけへこみ、その部分のみ灰色であり、わずかな光受容膜が観察された」(平岡礼鳥・東京海洋大学)


【生態】
 近くに生息するハオリムシを食べている。眼が退化している代わりに、匂いには敏感。魚肉などのえさを入れたかごを置くと、「我先に!」とかごに殺到するらしい。

「飼育しているときには、①大きいユノハナガニは熱源があるほうが生存期間が長い②小さい ユノハナガニは熱源がなくても生存できる③背中や腹部を熱源に当てる」(Miyake et al., 2007)

えさを食べた後に、20〜25℃の熱源を好む行動が観察された。これは温度上昇による消化酵素の活性が関係していると考えられている(池田周平・北里大学)


【生態系の違い】
▼太陽光の生態系


▼化学合成生態系



【なぜ大気圧でも生きていられるのか】



【3匹の見分け方】イラスト付きで
①かぐや 左の爪が割れている。
②
③


▼メモ
 熱水噴出孔は、遠赤外線の先に、可視光を含む微弱な光を発している。

黒スケ生け捕り奮闘記


 硫化鉄の鎧を身にまとった黒いスケーリーフット、通称「黒スケ」。今回のブログは、黒スケを捕まえるまでの物語を、実際にしんかい6500に乗って捕まえてきたJAMSTECの研究者、宮崎淳一さんの話を交えながら紹介します。

まずはカーリーチムニーへ

調査する場所は研究者に「聖地」とあがめられるインド洋の「かいれいフィールド」。かいれいフィールドは2000年に、JAMSTECの無人深海探査艇「かいこう」によって見つけられた。これまでに8つの熱水噴出孔が見つけられており、今も活発な熱水活動が続いている。その一つが最初の目的地である熱水噴出孔「カーリーチムニー」だ。


 「今まで見たものの中で、一番大きかった」。

 宮崎さんを、そう驚かせるカーリーチムニーとは、一体どんなものなのか。高さ1m、直径80cmの大きな”煙突”から、黒い煙のようにもくもくとブラックスモーカーが立ち昇る。大きく開いた”口”の内側には、鉄と硫黄からなる鉱物の黄鉄鉱(パイライト)がくっついている。潜水船が発する光を反射させ、「まぶしい」と感じさせるほど周囲に輝きを放っている。神秘的な雰囲気を漂わせているが、残念ながらここに黒スケはいない。「温度が高すぎて黒スケが住めないんです」。

マーカーが見つからない!

さあ、いよいよ、黒スケがいるとされる熱水噴出孔「モンジュチムニー」に向かいます。道標となるのは、前回の航海で設置したマーカー。交通安全で使う蛍光反射材のようなものです。しんかい6500の光を反射して、場所を教えてくれるはず!でした。。。

(c)JAMSTEC
ない。。いくら探しても見つかりません。そうこうしているうちに潜水時間が過ぎていきます。宮崎さんは「かなり焦りました」と苦笑いで振り返る。どうやら、イソギンチャクやエビなどで表面が覆われて、光を反射しなくなっていたようです。それでも冷静に船の位置を観測しながら、過去の論文に書かれている位置を見定めて、モンジュチムニーを発見!いよいよ、黒スケさんとの出会いが近づいて来ました!

分け入っても分け入っても白いエビ

そこに現れたモンジュチムニーの姿は、カーリーチムニーとはまったく違うものでした。エビ!エビ!エビ!チムニー全体にエビが群がり、一面真っ白の銀世界です。(気持ち悪いと感じる人もいるかもしれない。見学会では「ぎゃー!」と悲鳴に近い声が上がっていた?)


この無数のエビの内側に、黒スケさんがいるはずなんです。宮崎さん!どうしましょうか?

「邪魔なので、ホースでどかしましょう」。

というわけで、しんかい6500のアームに付けたホースで、エビを追い払います。えいっ!


おぉっ!エビの中からユノハナガニが顔を出しました。しかし、まだ黒スケの姿は見えません。宮崎さん!どうしましょうか?

「ちょっとじゃだめなんで、思いっきりやってください」。

えいっ!えいっ!



おぉっ!何か黒いものが!もしかしてこれが?

「黒スケが10匹、20匹出てきました。ピカピカ光るのですぐに分かります」。

さっそくホースで吸い込みます。2時間ほどで回収した黒スケさんは約90匹。しかし、その3倍以上のエビを吸い込んだそうです(汗)そして、このとき回収された黒スケさんの生き残りが、見学会でお披露目されました。


触覚がかわいい。

エビの紹介

最後に、「エビがかわいそう!」という声が聞こえてきそうなので、簡単にエビを紹介します。名前は「カイレイツノナシオハラエビ」。今回は邪魔者扱いでしたが、実は結構すごいやつなんです。左右の眼がくっついて、背中に広がってるんです!背中に光の受容物質を持ち、熱水から発せられる微弱な光を感じ取っているそうです。


▼データ
 Monju chimney:Kairei Field・25°19.2186'S・70°02.4219'E・2422m


黒スケ見学会

サンドウィッチ構造で鉄壁の防御


 殻の断面は、このようになっている。
 一番外側に硫化鉄(Fe3S4)の層(30μm・硬い・28.8GPa)
 中間にタンパク質(ケラチン)でできた殻皮層(150μm・柔らかい・8GPa)
 内側に炭酸カルシウムでできたアラゴナイト層(250μm・硬い・98.9GPa)
 硬い層の間に柔らかい層が挟まり、衝撃を逃しやすい構造ををしている。
 人間の歯の硬さ(弾性率)は、エナメル質が84.1GPa、象牙質が14.7GPa。
 硫化鉄のうろこは、歯の象牙質の硬さの2倍となる。

どのように硫化鉄ができるのか?

①スケーリーフット説
 黒スケのうろこは、ケラチンという人間の爪に含まれるタンパク質でできている。
 ケラチンはジスルヒド結合。
 環境とスケーリーフットが持つタンパク質の相互作用で黒くなったのでは。

②外部共生菌説
 うろこの表面にいるバクテリアが作っているのではないか。
 バクテリアの「デルタ」という種は、海水中の硫酸を硫化水素に変える。
 さらに熱水噴出口から吹き出る鉄イオンと反応し、硫化鉄ができるのでは。
 しかし、黒スケにも白スケにも、同じ数のデルタがいた。
 なので、デルタが関わっているのではないのかも。

③環境説
 <黒たまご作戦>
 かごに白スケの殻とうろこ、近くに住むアルビン貝の殻を入れて、
 黒スケの場所に置いてきた。
 しかし2カ月間の航海で、黒スケの場所に行けたのは1回だけ。
 今もインド洋にかごが眠っている(笑)

スケーリーフット




正式名は「ウロコフネタマガイ」。スケーリーフット(うろこのある足)の愛称で呼ばれる。2001年にインド洋の「かいれいフィールド」(水深2450m)で、アメリカの研究チームによって発見された巻貝。硫化鉄でできたうろこをまとっている。硫化鉄を体の構成成分に用いる生物の発見は初めて。硫化鉄を含まない白いものも、2009年に見つかった。

 かいれいフィールドは2000年に、JAMSTECの無人深海探査艇「かいこう」によって発見された熱水噴出孔。チムニーにくっついていることが多い。

 殻の直径は約4cm。硫化鉄のうろこは幅数ミリのものが密集している。うろこの硫化鉄は磁性を帯びていて、強度も優れている。歯の2倍の硬さ。貝殻のふたを持たず、カニやエビに襲われたときに、足を縮めてうろこで防御する。消化管の中に硫黄酸化細菌を共生させて、エネルギーを得ている。貝殻とうろこは黒いが、陸上で飼育するとさびえ褐色に変わる。長期間飼育するためには、海水の溶存酸素の量を減らす必要がある。

【QUELLE】
<3つの研究課題>
  ①スケーリーフットの硫化鉄バイオミネラリゼーションの全容解明
  ②腹足類の発生と共生菌獲得過程の解明
  ③熱水活動とその微生物生態系の多様性の解明と駆動原理の解明

「かいれい熱水域」で黒スケを発見。「ソリティア熱水域」で白スケを発見。現在は遺伝子に区別がない。黒スケが白スケに変わったのか。白スケが黒スケに変わったのか。別の種なのか。

鉄の由来は熱水噴出孔の熱水。
硫黄は海水に硫酸として、熱水には硫化水素として存在している。
→硫黄の供給源は海水?熱水?
  ・硫酸(海水)→硫化水素(微生物)→硫化鉄
  ・硫化水素(熱水)→硫化鉄

<硫化鉄はどうやってできるの?>
 ①黒スケ自身の代謝で分泌される
 ②黒スケ表面の微生物が作っている(外部共生)
 ③熱水のブラックスモーカーが付着している


【質問】
 ▼何から身を守るためのうろこ? 
 ▼磁力と硬さの数字は?
 ▼「世界最先端の船上飼育法」とはどんなもの?

→宮崎淳一さん
 ▼発見したときの概要。いつ、どこで見つけた?
 ▼「バイライト」が輝くとはどんな光景?
 ▼「モンジュ」のチムニーはどんな感じ?「カーリー」との違いは?
 ▼海の荒れ具合は?
 ▼マーカーが発見できなかったときのようすは?焦った?
 ▼「エビが至るところに」どのくらい?
 ▼「1万匹のしがみついていたエビが海底へ」どんな光景?
 ▼なぜエビはしがみつく?