変化アサガオ


 アサガオの英名は「The Japanese Morning Glory」。今から1200年ほど前の奈良時代に、中国から下剤の薬草として渡ってきた。突然変異の最初の記録は、江戸時代初期の「写本花壇綱目」(1664年)。青一色だったアサガオの花が、白く変化した。青い色素「アントシアニン」を合成する酵素を作る遺伝子が壊れたことが、原因だと考えられる。その後、「黒白江南花」と呼ばれる絞り咲きのアサガオが現れた。現在はこのような変異を「時雨絞」「雀斑(そばかす)」と呼んでいる。このような突然変異は、動く遺伝子「トランスポゾン」によって生み出されたと考えられている。

ユノハナガニ


【特徴】
 水深420〜1380mの深海の、熱水噴出孔の近くに生息している。和名は「ユノハナガニ」。体の色が白く、温泉に舞う湯の花にちなんで名付けられた。学名は2000年に「Austinograea yunohana」とされたが、2007年に「Gandalfus yunohana」に改められた。眼の退化が進んでいて、目と頭部を繋ぐ組織「眼柄」を動かせない。角膜は皮下に埋もれることなく見えるが、色素はない。雌の方が雄よりも一回り大きい。
→眼柄について調べる

「ユノハナガニの視覚器官は白色で一部が少しだけへこみ、その部分のみ灰色であり、わずかな光受容膜が観察された」(平岡礼鳥・東京海洋大学)


【生態】
 近くに生息するハオリムシを食べている。眼が退化している代わりに、匂いには敏感。魚肉などのえさを入れたかごを置くと、「我先に!」とかごに殺到するらしい。

「飼育しているときには、①大きいユノハナガニは熱源があるほうが生存期間が長い②小さい ユノハナガニは熱源がなくても生存できる③背中や腹部を熱源に当てる」(Miyake et al., 2007)

えさを食べた後に、20〜25℃の熱源を好む行動が観察された。これは温度上昇による消化酵素の活性が関係していると考えられている(池田周平・北里大学)


【生態系の違い】
▼太陽光の生態系


▼化学合成生態系



【なぜ大気圧でも生きていられるのか】



【3匹の見分け方】イラスト付きで
①かぐや 左の爪が割れている。




▼メモ
 熱水噴出孔は、遠赤外線の先に、可視光を含む微弱な光を発している。

黒スケ生け捕り奮闘記


 硫化鉄の鎧を身にまとった黒いスケーリーフット、通称「黒スケ」。今回のブログは、黒スケを捕まえるまでの物語を、実際にしんかい6500に乗って捕まえてきたJAMSTECの研究者、宮崎淳一さんの話を交えながら紹介します。

まずはカーリーチムニーへ

調査する場所は研究者に「聖地」とあがめられるインド洋の「かいれいフィールド」。かいれいフィールドは2000年に、JAMSTECの無人深海探査艇「かいこう」によって見つけられた。これまでに8つの熱水噴出孔が見つけられており、今も活発な熱水活動が続いている。その一つが最初の目的地である熱水噴出孔「カーリーチムニー」だ。


 「今まで見たものの中で、一番大きかった」。

 宮崎さんを、そう驚かせるカーリーチムニーとは、一体どんなものなのか。高さ1m、直径80cmの大きな”煙突”から、黒い煙のようにもくもくとブラックスモーカーが立ち昇る。大きく開いた”口”の内側には、鉄と硫黄からなる鉱物の黄鉄鉱(パイライト)がくっついている。潜水船が発する光を反射させ、「まぶしい」と感じさせるほど周囲に輝きを放っている。神秘的な雰囲気を漂わせているが、残念ながらここに黒スケはいない。「温度が高すぎて黒スケが住めないんです」。

マーカーが見つからない!

さあ、いよいよ、黒スケがいるとされる熱水噴出孔「モンジュチムニー」に向かいます。道標となるのは、前回の航海で設置したマーカー。交通安全で使う蛍光反射材のようなものです。しんかい6500の光を反射して、場所を教えてくれるはず!でした。。。

(c)JAMSTEC
ない。。いくら探しても見つかりません。そうこうしているうちに潜水時間が過ぎていきます。宮崎さんは「かなり焦りました」と苦笑いで振り返る。どうやら、イソギンチャクやエビなどで表面が覆われて、光を反射しなくなっていたようです。それでも冷静に船の位置を観測しながら、過去の論文に書かれている位置を見定めて、モンジュチムニーを発見!いよいよ、黒スケさんとの出会いが近づいて来ました!

分け入っても分け入っても白いエビ

そこに現れたモンジュチムニーの姿は、カーリーチムニーとはまったく違うものでした。エビ!エビ!エビ!チムニー全体にエビが群がり、一面真っ白の銀世界です。(気持ち悪いと感じる人もいるかもしれない。見学会では「ぎゃー!」と悲鳴に近い声が上がっていた?)


この無数のエビの内側に、黒スケさんがいるはずなんです。宮崎さん!どうしましょうか?

「邪魔なので、ホースでどかしましょう」。

というわけで、しんかい6500のアームに付けたホースで、エビを追い払います。えいっ!


おぉっ!エビの中からユノハナガニが顔を出しました。しかし、まだ黒スケの姿は見えません。宮崎さん!どうしましょうか?

「ちょっとじゃだめなんで、思いっきりやってください」。

えいっ!えいっ!



おぉっ!何か黒いものが!もしかしてこれが?

「黒スケが10匹、20匹出てきました。ピカピカ光るのですぐに分かります」。

さっそくホースで吸い込みます。2時間ほどで回収した黒スケさんは約90匹。しかし、その3倍以上のエビを吸い込んだそうです(汗)そして、このとき回収された黒スケさんの生き残りが、見学会でお披露目されました。


触覚がかわいい。

エビの紹介

最後に、「エビがかわいそう!」という声が聞こえてきそうなので、簡単にエビを紹介します。名前は「カイレイツノナシオハラエビ」。今回は邪魔者扱いでしたが、実は結構すごいやつなんです。左右の眼がくっついて、背中に広がってるんです!背中に光の受容物質を持ち、熱水から発せられる微弱な光を感じ取っているそうです。


▼データ
 Monju chimney:Kairei Field・25°19.2186'S・70°02.4219'E・2422m


黒スケ見学会

サンドウィッチ構造で鉄壁の防御


 殻の断面は、このようになっている。
 一番外側に硫化鉄(Fe3S4)の層(30μm・硬い・28.8GPa)
 中間にタンパク質(ケラチン)でできた殻皮層(150μm・柔らかい・8GPa)
 内側に炭酸カルシウムでできたアラゴナイト層(250μm・硬い・98.9GPa)
 硬い層の間に柔らかい層が挟まり、衝撃を逃しやすい構造ををしている。
 人間の歯の硬さ(弾性率)は、エナメル質が84.1GPa、象牙質が14.7GPa。
 硫化鉄のうろこは、歯の象牙質の硬さの2倍となる。

どのように硫化鉄ができるのか?

①スケーリーフット説
 黒スケのうろこは、ケラチンという人間の爪に含まれるタンパク質でできている。
 ケラチンはジスルヒド結合。
 環境とスケーリーフットが持つタンパク質の相互作用で黒くなったのでは。

②外部共生菌説
 うろこの表面にいるバクテリアが作っているのではないか。
 バクテリアの「デルタ」という種は、海水中の硫酸を硫化水素に変える。
 さらに熱水噴出口から吹き出る鉄イオンと反応し、硫化鉄ができるのでは。
 しかし、黒スケにも白スケにも、同じ数のデルタがいた。
 なので、デルタが関わっているのではないのかも。

③環境説
 <黒たまご作戦>
 かごに白スケの殻とうろこ、近くに住むアルビン貝の殻を入れて、
 黒スケの場所に置いてきた。
 しかし2カ月間の航海で、黒スケの場所に行けたのは1回だけ。
 今もインド洋にかごが眠っている(笑)

スケーリーフット




正式名は「ウロコフネタマガイ」。スケーリーフット(うろこのある足)の愛称で呼ばれる。2001年にインド洋の「かいれいフィールド」(水深2450m)で、アメリカの研究チームによって発見された巻貝。硫化鉄でできたうろこをまとっている。硫化鉄を体の構成成分に用いる生物の発見は初めて。硫化鉄を含まない白いものも、2009年に見つかった。

 かいれいフィールドは2000年に、JAMSTECの無人深海探査艇「かいこう」によって発見された熱水噴出孔。チムニーにくっついていることが多い。

 殻の直径は約4cm。硫化鉄のうろこは幅数ミリのものが密集している。うろこの硫化鉄は磁性を帯びていて、強度も優れている。歯の2倍の硬さ。貝殻のふたを持たず、カニやエビに襲われたときに、足を縮めてうろこで防御する。消化管の中に硫黄酸化細菌を共生させて、エネルギーを得ている。貝殻とうろこは黒いが、陸上で飼育するとさびえ褐色に変わる。長期間飼育するためには、海水の溶存酸素の量を減らす必要がある。

【QUELLE】
<3つの研究課題>
  ①スケーリーフットの硫化鉄バイオミネラリゼーションの全容解明
  ②腹足類の発生と共生菌獲得過程の解明
  ③熱水活動とその微生物生態系の多様性の解明と駆動原理の解明

「かいれい熱水域」で黒スケを発見。「ソリティア熱水域」で白スケを発見。現在は遺伝子に区別がない。黒スケが白スケに変わったのか。白スケが黒スケに変わったのか。別の種なのか。

鉄の由来は熱水噴出孔の熱水。
硫黄は海水に硫酸として、熱水には硫化水素として存在している。
→硫黄の供給源は海水?熱水?
  ・硫酸(海水)→硫化水素(微生物)→硫化鉄
  ・硫化水素(熱水)→硫化鉄

<硫化鉄はどうやってできるの?>
 ①黒スケ自身の代謝で分泌される
 ②黒スケ表面の微生物が作っている(外部共生)
 ③熱水のブラックスモーカーが付着している


【質問】
 ▼何から身を守るためのうろこ? 
 ▼磁力と硬さの数字は?
 ▼「世界最先端の船上飼育法」とはどんなもの?

→宮崎淳一さん
 ▼発見したときの概要。いつ、どこで見つけた?
 ▼「バイライト」が輝くとはどんな光景?
 ▼「モンジュ」のチムニーはどんな感じ?「カーリー」との違いは?
 ▼海の荒れ具合は?
 ▼マーカーが発見できなかったときのようすは?焦った?
 ▼「エビが至るところに」どのくらい?
 ▼「1万匹のしがみついていたエビが海底へ」どんな光景?
 ▼なぜエビはしがみつく?