概略
リーダーの仕事は
「よりよい未来に向けて人々を一致団結させること」。
そのために
「普遍的なことを発見して活用する」。
リーダーが注意を払うべき普遍的なものは
「未来への不安に応えること。明確さへの欲求」。
明確さを求めているのは4つ。
①誰のために働くか (ターゲット)
②核となる強みは何か (強み)
③核となる尺度は何か (尺度)
④今日できることは何か (行動)
▼
ターゲットを、強みを、尺度を、行動を
「洗い出す」「分類する」「絞る」
▼尺度をひとつ選ぶ条件
・従業員が働きかけて影響を及ぼせる
・ターゲットに合ったもの
・強みを数量で示すもの
▼使い分けるべき2つの行動
・
システマティック(体系的)な行動
(変化する)決まりきった日課に割り込んで新しい活動に巻き込む。
・
シンボリック(象徴的)な行動
(変化しない)集中すべき対象に注目させる。
マネジャーとリーダーはどうちがうのか?
▼マネジャー
出発点は部下一人ひとりの才能である。課題は、部下の才能を業績に結びつけるいちばんの方法を見つけ出すこと。
●部下の目標と企業の目標が一致しないときにはどうするのか?
マネジャーが企業のために働く唯一の道は、まず部下のために働くこと。マネジャーの成功または失敗は、ほかの誰かと働くより自分と働くことで部下の生産性が上がるかどうかにかかっている。それをうまくやる唯一の方法は、部下一人ひとりの成功こそが自分のいちばん大切な目標だと、彼らに心から信じてもらうこと。
▼リーダー
すぐれたリーダーは、「よりよい未来」に向けて人々を一致団結させる。
リーダーを定義するものは未来への関心である。リーダーは頭のなかで未来のありようをくっきりと描く。このイメージがリーダーを動かす。このイメージこそがリーダーの行動の動機となる。
リーダーは未来に惹かれる。リーダーは変化を待ちかね、進歩を待ちわび、現状に強い不満を抱いてこそ、初めてリーダーなのだ。「私は不満を覚える」。これこそリーダーの信条だ。リーダーは決して現状に満足しない。よりよい未来が見えるからだ。「現実」と「可能性」の衝突がリーダーを燃え立たせ、奮起させ、前進させる。これがリーダーシップである。
リーダーの出発点は、自分が描く未来のイメージだ。よりよい未来こそ、リーダーが語り、考え、反芻し、計画し、練り上げるものだ。リーダーが専念するのは未来である。
●リーダーになるにはどのような才能が必要か?
優れたリーダーシップを支える才能は「楽観主義」と「自我」である。
「楽観主義」。リーダーは物事が今よりよくなるということを、本能的に、心の底から信じていなければならない。リーダーが未来像を描くのは、そうせずにはいられないからだ。未来が鮮明に見えて頭から離れないからだ。現実がどれほど強い力を持とうと、リーダーにとっては未来の可能性のほうがはるかに力強い。それを実現するために、できることはなんでもする。リーダーにそれ以外の選択の余地はない。リーダーが楽観主義だというのは、物事は良くなるという彼らの信念を、何ものも(自身の気分も、ほかの人の筋の通った議論も、殺伐たる現状も)崩すことはできないという意味だ。
「自我」。リーダーシップの鍵は、よりよい未来を思い描くだけでなく、それを実現させるのは自分しかいないと、己の全存在をかけて信じることにある。現状をよりよいものに変える責任を引き受けるのは自分しかいないと信じるのだ。リーダーは、その信念や自己確信や自信を、自分より大きな事業への奉仕に注ぎ込む。
すぐれたリーダーは未来を描く
すぐれたリーダーの仕事は、よりよい未来に向けて人々を一致団結させることだ。そういう意味で、リーダーは起爆剤だ。よりよい未来への抑えがたい欲望に突き動かされ、その未来を実現するために周囲の人々を巻き込もうと、できることはなんでもする。
個性の違いを超えて、みんなに共通する感情や要求をとらえること。この能力こそ、卓越したリーダーシップの核心にあるもの「広範囲の共感」と呼ばれる能力だ。
すぐれたリーダーが行動の指針として考えているたったひとつのことは・・・
「普遍的なことを発見して、それを活用する」。
●私たち全員が共有するものとは、具体的に何か?
普遍特性は、大きく5つにまとめられる。相手の不安を理解すれば、相手が必要としているものもわかる。
①安全への欲求(死に対する不安)
②共同体への欲求(部外者に対する不安)
③明確さへの欲求(未来に対する不安)
④権威への欲求(混沌に対する不安)
⑤敬意への欲求(無価値であることへの不安)
リーダーが最大の注意を払う必要があるのはこのうちひとつ「明確さへの欲求」だけだ。
リーダーに必要なのは、未知のものを利用しなければならないということだ。リーダーは、未知のものに対する私たちの怖れをとらえ、それをエネルギーに変える方法を見つけなければならない。リーダーは未知のものに対する怖れを、未来を信じる気持ちに変えることができる。
不安を自信に変える一番の手段は明確さだ。リーダーが行動や言葉、映像、写真、ヒーロー、数字などを通して、未来を鮮やかに描くことだ。
●明確さを求めているのはどこか?
①誰のために働くか
②核となる強みは何か
③核となる尺度は何か
④今日できることは何か
①誰のために働くか
誰のために働くかをリーダーが明確に示さなければならないのは、従業員に必要だからだ。あらゆる人々を常に満足させておこうというのは恐ろしい考えだ。不安を和らげるために、リーダーに焦点を定めてほしいのだ。最も共感すべき相手は誰なのか、私たちの成功を評価するのは誰なのか。
誰のために働くかという問いに正しい答えなどない。明確な答えが必要なだけだ。世の中には多くの真実がある。多くのものを取り込みすぎた正確すぎる答えは混乱を招く。混乱は不安を生んでしまう。リーダーはある相手に焦点を絞り、その相手のために働くように専念する。すると、波及効果の力ですべての相手のために働いていることになる。
その気があれば調査や研究をして顧客層の分類に精を出してもいいが、最終的に、複雑な顧客区分からターゲットとなる顧客層を決めて、ニーズをはっきり描いてみせることが大切だ。
▼
洗い出す
分類する
絞る
②核となる強みは何か
リーダーは私たちが勝てる理由を示さなければならない。よりよい未来で私たちが優位に立つ理由を示さなければならない。大勢のライバルになぜ勝てるのか。こちらにどんな強みがあるのか。有利な点はなにか。リーダーがこういった疑問にはっきり答えられれば、私たちは自身が持てる。粘り強く、意欲的に、創造的になれる。リーダーが示す強みは正確である必要はない。明確であればいいのだ。最も効率的な組織は「強みを総動員し、弱みを気にしない」。
③核となる尺度は何か
リーダーは計測できることを分類して、従業員が集中すべきひとつの尺度をを見極めなければならない。未来という森のなかで、そのくらい前進しているのかを確かめる尺度が必要なのだ。未来という森は暗く、深く、気力を萎えさせる。だからリーダーは、今どこまで来ていて、あとどれだけ進めばいいのかを明らかにする、核となる尺度を示さなければならない。
複雑さは従業員を混乱させる。尺度はひとつだけ与えるべきだ。従業員が自ら左右できる尺度。ターゲットのためにどれだけ良い仕事ができているかを測定し、自分たちの強みを数量で示してくれるもの。
「正しい」尺度など存在しない。「明確な」尺度を示すことが、大きな自身と創造力、根気強さ、活力を与える。
使える尺度をすべて整理してひとつを選ぶのだが、そのときの条件は、ターゲットとする顧客層に合ったもの、あなたが指摘した従業員の強みを数量で示すもの、従業員が働きかけて影響を及ぼせるものであることだ。理想を言えば、この尺度は売上高や収益率、税収などの結果を表す指標より、従業員の熱心さや安全、犯罪発生率などの「先行指標」の方が良い。
▼尺度をひとつ選ぶ条件
・従業員が働きかけて影響を及ぼせる
・ターゲットに合ったもの
・強みを数量で示すもの
④今日できることは何か
単に変化を起こすものでなく、意図を明確に示すものとして行動を使うなら、私たちが反応を示すのは次の2つの行動である。「システマティック(体系的)な行動」と「シンボリック(象徴的)な行動」だ。システマティックな行動は、決まりきった日課に割り込み、私たちを新しい活動に巻き込む。シンボリックな行動は、私たちの活動を変化させるものではない。注目を集めるだけだ。私たちの注意を新しい何か、はっきりとした集中すべき対象を与える。
リーダーがよりよい未来に導こうとするときには明確さが必要であり、シンボリックな行動とシステマティックな行動の両方が、人に勇気を与える明確さを持っている。とれる行動のすべてを洗い出して分類し、私たちの注意を捉えるもの(シンボリックな行動)、私たちの普段の日課を変えるもの(システマティックな行動)がいくつか見つけられれば、よりよい未来に対する私たちの確信は深まるだろう。
何をするかではなく、何をしないか
何を選ぶかではなくて、何を選ばないか。どんなに魅惑的な申し出があろうと、楽しめないだろうと直感的にわかる活動には手を出さない。
▼人の性格の5つの分類
①開放性(目新しさや多様性にどれだけ興味を示すか)
②外向性(外部からの刺激や興奮をどれだけ求めるか)
③神経症傾向(どれだけ神経が張り詰めているか)
④調和性(どれだけ人に合わせられるか)
⑤誠実性(どれだけ几帳面にものごとをこなすか)