討論型世論調査とは
情報に基づく熟慮と討議を経て形成された意見を調査すること。表面的な理解や情報操作のもとで重要な政策課題が決定されることへの疑問が出発点。
「熟議(Deliberation)」を重視している。
討論資料や専門家から情報を提供され、
小グループ討論と全体会議でじっくりと討論をする前後に、
意見や態度の変化を調査する。
公募せずにランダムサンプリングのため、
ごく一般的な人々(サイレント・マジョリティ)の意見を調査できる。
▼全体の流れ
母集団を無作為抽出(ランダムサンプリング)する。
議題となる政策課題について世論調査を行う。(T1調査)
世論調査の回答者から、討論フォーラムの参加者を選ぶ。
討論資料を送り、政策課題について考える。
討論前の調査を行う。(T2調査)
小グループ討論と全体会議を繰り返す。
討論前の調査と同じ調査を討論後に行う。(T3調査)
学ぶ(Learn)
選択肢や論点が整理され根拠となるデータが載っている「討論資料」を読む。・議題の問題の所在を明らかにし、
・主要な論点を挙げ、
・論点に対する複数の見解を論拠とともに解説する。
→これってどういうこと? 自分の言葉で理解する必要がある。
内容の妥当性や公平性を保つため、異なる立場の複数の専門家から助言を受ける。
特定の意見に偏らないように、複数の見解をバランスよく取り上げる。
考える(Think)
話し合う(Talk)
討論フォーラムで他の参加者とともに対話する。15人ほどの小グループに分かれて議論する「小グループ討論」と、
専門家や政策担当者に参加者が質問する「全体会議」を行う。
▼小グループ討論
15人ほどのグループに分かれて議題について話し合う。
モデレーターの存在。
賛成派と反対派が向かい合い、自説の正当性を主張し合う、言い争いではない。
他の参加者を言い負かすことを目的としていない。
「討論」ではなく「対話」である。
合意形成が目的ではない。それぞれの意見や経験を分かち合う。
互いに異なる意見を持っているのは当然であることを前提としている。
対立する考えに触れることで、より充実した意見を形成できるようにする。
自分の意見を伝えるだけでなく、他者の意見を聞くことは大切。
異なる立場の意見を他者から聞くことは、
自分の意見が妥当か、他の考え方はできないかと考えるときに必要。
自分の意見が妥当かどうかは、他者との議論でしか確認できない。
ルール
①全員の意見を尊重すること
②全員が議題の専門家ではないことを認める
③お互いの意見を聞くこと
④立場が異なる人にも、互いに敬意を持ち話し合うこと
▼全体会議
専門家の対話力は大切。
対話力には、分かりやすい言葉で簡潔に答えるだけでなく、
どういう気持でその質問しているのか、質問者の悩みや背景を理解する力も含まれる。
→自分の普段の対話にも当てはまる。
調査について
事前の世論調査(T1調査)、討論フォーラムの開始前の調査(T2調査)、
討論フォーラム終了後の調査(T3調査)の3回実施する。
質問項目
・議題についての知識について
・議題についての判断について
・判断の前提となる基準や価値観について
・回答者の一般的な価値観について
議題についての知識を問うのは、
理解が深まっているかどうかを定量的に確認するため。
回答者の意見の微妙な変化を把握するため、
7段階や11段階の多段階尺度で質問している。
「どのシナリオが良いですか?」という聞き方はしない。
3つのシナリオのそれぞれに、11段階尺度を使って質問した。
→エネルギーWSのリスクの選択や、
気候変動のMTでの意見の吸い上げで活用しよう。
議論の潮目
議論の潮目とは、マスコミや評論家の受け売りのような発言から、
自分の体験や身近な事例をもとに、自分の言葉で語るように変わる変化。
世間、国、政府という主語ではなく、
「私はこう思う」「私はこう考える」など、
私が主語になる発言が増えるような変化のこと。
→対話の設計では「私」が主語になるような発言を増やす場をつくることが大切。
自分の言葉で語られるような話し合い。
議論の自分ごと化
専門家もシナリオを完全に想定したり評価したりできない。専門家も市民と同じ立場にあることを、参加者が理解した。
専門家は必ず回答があり、黙っていても解決してくれる存在ではない。
専門家任せを脱して、自分で考えていくべきだ。
各シナリオのメリットとデメリットを理解したうえで、
『自分がどういう生活をしたいか』という人生観で選ぶ。
そのかわり、選択の結果は自分たちが責任を取るべきと覚悟する。
「『私たちがどんな社会を生きたいのか』とか、
『どんな人生を生きたいのか』というのを、
自分たちのビジョンとかバリューを、話せる機会がもっとあったらいいな」。
「メリット・デメリットの比較のような枝葉末節の議論ではなく、
『自分がどういう人生を生きたいか』で考えるべきだ」。
「偉い人に頼っても答えは出ないし、
最後に偉い人に責任をとってもらうのではなくて、
私たち自身が考えて、自分で選び取っていかないといけない」。
「原子力に賛成の人も、そうでない人も、
『自分がどういう生活をしたいか』、
『どういう人生を生きたいか』と考えだした」。
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