NST(栄養サポートチーム)


NST : Nutrition Support Team

 栄養管理で患者の状態を改善することを目指す医療チーム
 医師、看護士、栄養士などがチームを組んで対等に考える。
「患者が自分で口から食べることを目指して栄養を管理する」(経口摂取を目指す)

【NSTの仕組み】

① 栄養スクリーニング
 栄養治療が必要かを決める

② 栄養アセスメント
 静的アセスメント:身体計測や血清総タンパク値(アルブミン)のように
          比較的代謝回転の遅い指標
         (長期的な効果判定)
 動的アセスメント:窒素バランスによるタンパク代謝回転率や間接熱量測定による
          エネルギー代謝動態など経時的な変動を評価
         (短期的な効果判定)
 予後判定アセスメント:複数の栄養指標を組合わせて栄養障害の危険度を判定

 栄養障害の程度の診断、栄養療法の適応、処方の決定、効果の判定
 入院患者の身長や体重、上腕周囲長・上腕三頭筋皮下脂肪厚の測定や血液検査、
 問診表で体重の変化や食事の摂取状況、消化器症状などを確認する

 アセスメントの結果をもとに栄養状態を評価し、必要栄養量を計算する
 現在摂っている栄養量を計算して不足分を割り出す
 栄養療法が必要かどうかを検討する

③ カンファレンス
 週に1回集まって会議

④ NST回診
 週に1回患者の体重を測定し、必要カロリーを計算し直す
 リハビリのメニューに合わせてカロリーを計算し直す

⑤ ランチタイム・ミーティング
 月、木の週2回、昼休みに昼食を食べながら1時間実施
 NST回診で問題になった症例や病院の問題点の討議、栄養管理の勉強など

⑥ コンサルテーション


【NSTチーム】

① 褥瘡チーム
 褥瘡(じゅうそう)は「床ずれ」のこと
 尾鷲総合病院の患者は高齢者が大半を占め、床ずれが多い

 床ずれ対策の第一歩は栄養管理を行うこと
 高齢者は必要カロリーが少ないが、微量栄養は必要

② 摂食・嚥下障害チーム
 2002年4月活動開始。ディレクターは作業療法士・矢賀信二さん
 摂食・嚥下とは、食物を認識して口に取り込み、胃に至るまでの一連の過程

 「経口摂取こそ最高の栄養法であり、栄養管理の最終目標だ」
 経静脈栄養(点滴) < 経腸栄養 < 経口栄養

 栄養管理士の世古容子さんが、摂食・嚥下障害食を開発した
 嚥下障害Tの活動により経口摂取できなかった患者ができるようになった

③ 呼吸療法チーム
 2003年4月活動開始。ディレクターは理学療法士・大川貴正さん

④ 生活習慣病対策チーム
 2001年12月設立。
 糖尿病教室などの生活習慣病教室を開催した

⑤ 病院食改善チーム
 病院食の味、盛り付け、食器の改善に取り組んだ。
 普通の食事を半分に減らして濃厚流動食を提供する「ハーフ食」の導入


【時系列】
 2000年 1月 東口高志医師が尾鷲総合病院に外科部長として赴任
     7月 NST稼働開始。褥瘡チームを設立
     9月 「ハーフ食」を導入
 2001年12月 生活習慣病対策チームを設立
 2002年 4月 摂食・嚥下障害チーム稼働開始
 2003年 4月 呼吸療法チーム稼働開始
 2006年 4月 診療報酬を改定し、栄養管理実施加算を新設
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これまでは栄養士が患者と接することは少なかった。

① 口の中の雑菌を取り除く
② 30秒で3回唾液を飲み込めるか(筋力チェック)
③ 飲み込んだ唾液がのどに詰まっていないかを確認

喉の筋肉が衰えると、食道ではなく気管に食べ物が入って肺炎になる。
とろみをつけてゼリー状の入院食を開発した。
 (お茶ゼリー、魚ゼリー、大根のぬか漬けをゼリー状に)
口からの飲食が無理だと判断された7割が可能になった。

腸に食べ物が通ることに意味がある。
食べ物が通過するときに異物(細菌)も通過し、柔毛の免疫細胞が活性化する

点滴は血管に直接栄養を流し込む。
長期間点滴に頼り絶食を続けると、腸が使われなくなるため、
柔毛が短くなって免疫細胞が活性化されなくなり、体の免疫力が低下する
「腸が元気な患者は、できるだけ腸を利用するのが良い」

【効果】
① 床ずれが減った(栄養状態が悪くなると皮膚が弱くなる)
② 院内感染が大幅に減少(40%減少)

【診療報酬】
 以前は医療保険の診療報酬が得られなかった。
 現在は・・・

【メリット】
 患者の入院期間が短縮された → 収入増
 ① 入院期間が短くなるほど、1日当たりの診療報酬が上がる
 ② 空いたベッドに新しい患者を受け入れられる

【グラフ】
 平均入院日数の推移
 床ずれ患者
 院内感染