クローン病のメカニズム

クローン病は遺伝子にかかわる病気。
多くの遺伝子がかかわる多遺伝子性疾患。 
「遺伝子が銃に弾を込め、環境が引き金を引く」

(遺伝的素因)(環境的要因)(免疫異常)=発症

この
 ① 遺伝的素因
 ② 環境的要因
 ③ 免疫異常
の3点に分けて、クローン病のメカニズムをまとめてみようと思う。

【① 遺伝的素因】
 NIH()の2012年11月の発表によると、IBDにかかわる遺伝子を、新たに71個発見した。これにより、IBD(炎症性腸疾患)にかかわる遺伝子は全部で163個になった。163個の遺伝子のうち、110個はCDとUCの両方にかかわる。さらに、CDだけにかかわるものは30個、UCだけにかかわるものは23個ある。合計して163個になる。つまりCDにかかわる遺伝子は140個、UCにかかわるものは133個となる。
 
▼実験方法
 被験者は、クローン病(CD)の患者20076人、潰瘍性大腸炎(UC)の患者15307人、どちらの病気でもない人25445人。15カ国の国籍を持つ人を含む。

▼参考サイト
 http://caringforcrohns.com/2012/12/06/ibd-genes-a-confusing-relationship
 http://www.nih.gov/news/health/nov2012/niddk-01.htm
 http://www.nature.com/ng/journal/v42/n12/full/ng.717.html

▼CDにかかわる遺伝子
 ・ATG16L1
  chromosome2、SNP(rs2241880)、相対リスクは1.37

 ・IL23R
  chromosome1、SNP(rs10889677, rs11209026)、相対リスクは0.83

 ・IRGM
  chromosome5、SNP(rs4958847)、相対リスクは0.92

▼最新の研究
 200の遺伝子がかかわっているのではという報告もある。



【② 環境的要因】
 食生活(高脂質、繊維質)、喫煙、ストレス、腸内細菌など。


【③ 免疫異常】
▼現在提案されているモデル
 ①マクロファージが過剰に反応し、炎症性サイトカインであるIL-23 IL-12 IL-6 TNF-αを過剰に分泌する
 ②IL-23により、ヘルパーT細胞のTh1細胞とTh17細胞が活性化し、IFN-γを過剰に分泌する
 ③IFN-γにより、マクロファージがさらに活性化し、炎症性サイトカインのTNF-αを分泌する


▼語句
 ・サイトカイン:免疫細胞が分泌するタンパク質。細胞同士が連絡を取り合う信号
 ・炎症性サイトカイン:分泌されると炎症を強めて、細胞の破壊をもたらす。
   TNF-α IL-1 IL-6 IL-8 IL-12 IL-18 IFN-γ G-CSF
 ・抗炎症性サイトカイン:IL-4 IL-10 IL-11 IL-13 TGF-β
   炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインのバランスが崩れると、
   自己免疫疾患を引き起こす
 ・TNF-α:腫瘍壊死因子。固形がんに出血性の壊死を生じさせるサイトカイン


▼クローン病の薬

抗TNF-α抗体:TNF-α と結合して炎症を抑える。また、TNF-αを作る細胞を壊す。免疫力が低下するため、肺炎などの感染症にかかりやすくなる。

・レミケード(インフリキシマブ)
キメラ型モノクローナル抗体。全体の25%がマウス由来のDNAなので、アレルギー反応が起こる場合がある。点滴で投与するので、摂取に時間がかかる。2〜3時間。レミケードに対する抗体ができ、効果が薄れる場合がある。

・ヒュミラ(アダリムマブ)
ヒト型モノクローナル抗体。100%ヒトの成分でできているため、アレルギー反応が起きにくい。皮下注射で自分で投与できるので、使いやすい。数分で投与できる。

抗IL-6抗体:Th1細胞とTh17細胞の増殖を抑える。炎症を抑えるTregの分化を促進する。

・アクテムラ(トシリズマブ、MRA)
抗TNF-α抗体との併用で一定の効果が見られたが、まだ治験中。リウマチ患者で肺炎などで死亡する例が多く、認可は難しい状況。