実は身近なエネルギー
夜空に輝く星はすべて核融合エネルギーで光っている宇宙にある物質をつくる原子は、すべて核融合エネルギーで生まれた
地球に降り注ぐ太陽のエネルギーも核融合エネルギー
(今届いている太陽の光は50万年と8分前の核融合反応で生まれた光)
発電方法
1億度に加熱したDとTのプラズマを閉じ込めて核融合反応を起こす。発生した中性子を、Liのブランケットで吸収する。
反応で生じた熱で発生させた蒸気でタービンを回して発電する。
D(重水素)+ T(三重水素)→ He(ヘリウム)+ n(中性子)
n(中性子)+ Li(リチウム)→ T(三重水素)+ He(ヘリウム)
D:deuterium(デューテリウム)
T:tritium(トリチウム)
▼核融合を実現する条件
① 温度 :1億度
② 密度 :100兆個/cm3
③ 閉じ込め時間:1秒
④ β値 :5%
(β値とは磁場に対する圧力比。プラズマの圧力 / 磁場の圧力 × 100
値が大きいほど、より小さな磁場で高い圧力のプラズマを閉じ込められる
効率の良さを示しているとも言える)
燃料は何を使うの?
重水素0.1g(海水3リットル)、リチウム0.3gで、1人あたりの年間電気使用量7500kWhを発電できる
→「7500kWh」は、どのように計算されたのか
→同じ電気量をつくるために必要な、ほかの燃料の量を知りたい
(石炭、石油、天然ガス、ウラン)
(重水素と三重水素の燃料1gで、石油8tに相当するエネルギーをつくれる)
海水中の水素の0.015%が重水素
リチウムは海水1リットル中に0.17mg
(リチウム0.3gを海水中から取るには、1765リットルが必要)
リチウムイオン電池の電池容量(Ah)に0.3をかけた値がリチウム含有量
→携帯1台の電池に含まれるリチウムの量は
(DSは850mAhだから、0.255g)
プラズマってなに?
物質を暖めると、固体 → 液体 → 気体と変化する。気体をさらに加熱すると、1万度くらいで原子核(イオン)と電子に分かれる。
この電離した気体のことを「プラズマ」と呼ぶ。
プラズマは荷電粒子(電子とイオン)の集合体。
▼身近なプラズマ
蛍光灯。蛍光灯の中には、数百Pa のArガスと、数Pa の水銀蒸気が入っている。
両端のフィラメントから放出された電子が Arを励起させる。
励起した Arが水銀蒸気を励起させ、水銀のプラズマが発生。
253.7nmの輝線スペクトルを発生する。
その光は紫外線なので見えないが、蛍光灯の周りに塗った蛍光物質に当てて、
可視光線を発生させている。
▼プラズマのパラメータ
電子温度:プラズマ中の電子のエネルギー分布に対応する温度
イオン温度:プラズマ中のイオンのエネルギー分布に対応する温度
プラズマ密度:単位体積あたりの荷電粒子の個数
どうやってプラズマを閉じ込めるの?
太陽は膨張しようとするプラズマの圧力を、自分の重力で閉じ込めている。地上の核融合反応は、磁場やレーザーで閉じ込める。
① 磁場で閉じ込める (慣性閉じ込め方式)
② レーザーで閉じ込める (ヘリカル方式、トカマク方式)
プラズマを閉じ込めるには「ねじれた磁力線」が必要。
→なぜ磁力線に「ねじれ」が必要なのか?
磁力線をねじると、中心部から外側まで磁力線の無数の層が、
マトリョーシカのように、入れ子状に重なった状態になる。
この磁力線の多層構造によりプラズマを閉じ込めることができる。
ねじれの角度の変化が大きい方が、より強い磁力線のカゴになる。
▼ヘリカル方式は、ねじれた超電導コイルを使って磁力線をねじる。
プラズマの中に電流を流す必要がないので、長時間の保持に優れている
▼トカマク方式は、プラズマの中に電流を流して磁力線をねじる。
プラズマの中に電流を流すので、定常的に維持することが課題
ヘリカル方式:核融合科学研究所(LHD)
トカマク方式:ITER、那珂核融合研究所(JT-60)
慣性閉じ込め方式:国立点火施設(NIF・アメリカ)
どうやって加熱するの?
▼加熱・オーム加熱:
電場で加速された電子がイオンと衝突。
運動エネルギーが熱エネルギーに変わり、プラズマの温度が上がる
・追加熱:中性粒子入射加熱法
・α粒子加熱:
核融合反応によって発生したα粒子が、電子とイオンに衝突して加熱される
▼損失
・放射冷却:
・熱伝導:
中性粒子入射加熱法
高速の中性粒子を、磁場に閉じ込められたプラズマに入射。
運動エネルギーをプラズマ粒子との摩擦熱に変えて、プラズマ温度を上げる加熱法。
水素原子に電子1個を付加させた「負イオン」を生成。
(電極の表面にセシウムを被覆して電子を供給する)
180kVの高電圧で加速させ、秒速6000㎞の水素ビームをつくる。
電子を除去して、直径10mm以下の負イオンビームだけを取り出す。
770本以上のビームを10μmの精度で制御し、直径52cmの入射ポートに絞り込む。
3台の中性粒子ビーム入射加熱装置を用いて、14000kW以上のエネルギーを投入。
1億5000万℃のイオン温度、β値5%を達成した。
自己燃焼させるためには、ビームを2000kVで加速する必要がある。
どこまで達成したのか?
ローソン図(縦軸:中心イオン密度×閉じ込め時間、横軸:中心イオン温度)→達成の指標はローソン図でいいのか?
→トカマクとヘリカルで指標が違う。どのような指標が適切か?
どんなリスクがあるのか? リスクの大きさは?
▼地震が起きたら?原発の場合は・・・
「止める」制御棒を入れて核分裂反応を止めなければいけない
「冷やす」燃料棒の放射熱を下げるために冷やさなければいけない
緊急炉心冷却装置で大量の水を格納容器に入れる必要がある
「閉じ込める」ヨウ素131やプルトニウムなどの放射性廃棄物の拡散を防ぐため
核融合発電の場合は・・・
「止める」自然に止まってしまうので暴走は起こらない。勝手に「止まる」
「冷やす」崩壊熱密度は原発の1000分の1。冷やさなくても大丈夫
「閉じ込める」飛散性の高い燃料のトリチウムを閉じ込める必要がある
原発は「止める」「冷やす」「閉じ込める」が重要だったが、
核融合発電は「閉じ込める」のみが重要
▼放射性廃棄物は出るの?
放射線を発するのは、
①燃料のトリチウム
②中性子により放射化した核融合炉
①トリチウムについて・・・
潜在的放射線リスク指数:放射性物質を許容濃度以下まで薄めるために必要な空気の体積
トリチウム:3.5×10^14
ヨウ素131:5.4×;10^17
(核融合発電ののトリチウムの放射線リスクは、原発のヨウ素のリスクの1500分の1)
②放射化した核融合炉について・・・
運転停止直後は、核融合炉の放射線リスクは、原子炉の放射線リスクの100分の1。
1年後には1000分の1、100年後には100万分の1になる。
→自然レベルまでに下がるには何年かかるのか
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