核融合発電の放射性リスクの考察

核融合発電にかかわる放射性物質

核融合発電にかかわる放射性物質は、燃料の「トリチウム」と、
発生する中性子により「放射化された核融合炉」である。

放射化された核融合炉は、寿命を迎えたのち、100年ほど放置すれば、
作業員が近づけるレベルまで放射線量が下がり、再利用できるとされる。
また核融合炉は固体なので、漏れだしたり拡散する恐れは低く、近づかなければ良い。

一方のトリチウムは水素の放射性同位体である。
トリチウムは気体であり、何らかの要因で拡散する恐れがあるので、
今回はトリチウムの放射性リスクを考察することにする。

トリチウムの基礎情報

  • 半減期は12.3年
  • β線を放出してヘリウム3になる
  • β線のエネルギーは最大18.6keV、平均5.7keV
  • 比放射能は 3.6×10^17 Bq/kg
(参考)原子力資料情報室(CNIC)
   「福島第一原発のトリチウム汚染水」『科学』Vol.83, No.5(2013)

β線は皮膚や衣服により遮蔽されるので、外部被ばくの恐れは少ない。
今回は内部被ばくを考える。

トリチウムの内部被曝

トリチウムが体内に取り込まれると、主に2つの形態を取る。
ひとつは酸素と結合して水のようになる「トリチウム水(HTO)」。
もうひとつは有機物に結合する「有機トリチウム(OBT)」だ。
「生物学的半減期」は水の形の場合は約10日、有機物の形の場合は平均40日。
「預託実効線量係数(mSv/Bq)」は成人の場合、
水の場合は1.8E−08、有機物の場合は4.2E−08。(ICRP Publication 72)

(表の上がトリチウム水、下が有機トリチウム)

あとは体内に取り込まれたトリチウムの量が分かれば被ばく量がわかるが、
それは想像の域を出ない。

参考までに、将来の核融合炉で使うトリチウムの量を示しておく。
原子力資料情報室(CNIC)によると、
将来の核融合炉(1GW)で1年間に使うトリチウムは130kg。
これは4.7×10^19Bqに相当する。

しかし、何らかの理由で拡散するとしても、
1年間に必要な燃料がすべて漏れだすとは考えにくい。

原子力委員会の「核融合エネルギーの技術的実現性 計画の拡がりと裾野としての基礎研究に関する報告書」(2000)では、原子炉のヨウ素131との比較において、炉内にある燃料の量を採用している。それによると、将来の核融合炉(1GW)の炉内にあるトリチウムは4.5kgで、これは1.7×10^18Bqに相当する。

(参考)「核融合エネルギーの技術的実現性 計画の拡がりと裾野としての基礎研究に関する報告書」