ロゼッタ・フィラエ

概要

欧州宇宙機関(ESA)の探査機「ロゼッタ」が投入した小型着陸機「フィラエ」が、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸した。探査機が彗星に着陸するのは初めて。ロゼッタは2004年に打ち上げられ、10年かけて65億㎞の旅を経て彗星にたどり着いた。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は長さ4㎞、幅3㎞。彗星は、小惑星とともに、「太陽系の化石」と呼ばれ、太陽系誕生のころの物質を保存していると考えられている。惑星系や地球の海や生命の起源につながる貴重なデータが得られるかもしれない。

思うように着地できず!

フィラエは着陸地点を慎重に選んだ後、高度22.5㎞のロゼッタから分離。約7時間かけて彗星に着陸した。(着陸ポイントの名前は「アギルキア」)計画では、探査機上面のガスジェットを噴かし、機体が跳ね上がらないように地表に押しつけながら、銛を打ち込んで固定する予定だった。しかし、ガスジェットが噴かず、銛も打ち込めなかった。機体は大きく2回バウンドして、目標から2㎞ほど離れた地点に着地。着陸場所がくぼ地の縁だったとみられ、3本脚の2本だけが地表に着き、1本は宙に浮いている。彗星の重力はとても弱く、表面から噴出する塵やガスによりフィラエが飛ばされてしまう恐れもある。



電池が切れる!おやすみフィラエ

内蔵電池の寿命は64時間。その後は太陽電池で発電する計画だったが、思ったようにいかなかった。太陽の光を7時間浴びる予定だったが、現地点では1時間半しか浴びることができない。フィラエの向きが予定と違うせいとみられる。ESAはその後、より太陽光が当たるようにフィラエの姿勢を35度回転させる操作をしたが発電できず。

日本時間の15日午前に通信を絶ち、休眠に入った。今後はロゼッタが上空20~30㎞を周回して見守りながら、充電を繰り返すフィラエに「話しかけ」ながら暖かく見守る。来年8月には、太陽に最接近する。復活のチャンスかもしれない。フィラエが再び目を覚ます日を、静かに待ちましょう。

フィラエが届けたデータ

フィラエは電池が尽きるまでの時間と闘いながら、地表の物質や表面付近のガスのデータを集めた。彗星から出ているガスの分析では水や二酸化炭素、メタンなどが検出された。また、「転倒」のリスクを覚悟の上で、地下サンプル採取用ドリルを稼働。壮絶な闘いをしながら、彗星の核から直接獲得したデータを、ロゼッタ経由で全て地球に送り届けた。

また、着陸を待つことなく多目的センサー「MUPUS」で彗星周辺の環境観測を開始していた。MUPUSの一連の機器のうち温度計や加速度計は、発射に失敗した機体固定用のくい(銛)といっしょに収納されていたため、残念ながらそれらのデータは得られなかった。だが機体に取り付けられていた温度分布図作成器は、下降中および3回のタッチダウンの最中にも測定し続け、フィラエの最終着陸点の温度は摂氏マイナス160度より低いことがわかった。

土壌サンプルや気化しやすい化合物の分析を行う「COSAC」からは、着陸直後に大気中の有機分子が検出されている。

プローブ(探針)は塵の層に刺さり、さらにその下の層に進んだが、モーターのパワーを最大に上げても数mmより深く打ち込むことはできなかった。「実験室における計測データと比較してみると、かちかちに凍った氷くらい硬い層に出くわしてしまったと思われます」(MUPUS主任研究員のTilman Spohnさん)という。

温度分布測定とプローブの打ち込みの結果から、彗星表面は厚さ10~20cmの塵の層で覆われ、その下には氷、または氷と塵の混合物の硬い層があるという初期評価が下された。ロゼッタの観測から彗星核全体では低密度であることがわかっているので、さらに深いところでは氷は隙間の多い、すかすかな構造と思われる。

「今後じゅうぶんな電力を得てMUPUSが再び作動すれば、プローブが差し込まれた層を直接観測でき、太陽に接近するにつれて起こる変化を見ることができるでしょう」(Spohnさん)。


▼調査の計画
パノラマ写真撮影やドリルで深さ20cmほどの地表サンプルを採取、電波探査装置を使った内部構造の探査など初期の調査を行う。彗星は、現在、火星と木星の軌道の間にあるが、来年8月に火星の軌道の内側まで太陽に接近する。太陽に近づくにつれて変化する表面の様子を観測する。一方、ロゼッタは彗星の周囲で、彗星から放出されるガスやちりを測定し、太陽接近時の彗星の活動の様子を観察する。

コメント

「小惑星に比べて、彗星は多くの水を含んでいる。地球にある海の水の起源や太陽系初期の様子を知る、重要なデータが得られる可能性がある」(JAXA・吉川真准教授)