XMASS(Xenon detector for weakly interacting MASSive Particles)は、東京大学・宇宙線研究所が所有する実験施設です。宇宙から地球にやってくる暗黒物質を捕らえようとしています。
どうやって観測するのか
観測する方法は、世界で初めて超新星爆発によるニュートリノを観測した「カミオカンデ」の方法とよく似ています。カミオカンデは大量の水を入れたタンクを、岐阜県・神岡鉱山の地下1kmに設置。飛び交うニュートリノが水分子の原子核と相互反応したときに発する弱い光を捕らえて、間接的にニュートリノを観測していました。XMASSは水の代わりに、マイナス100℃まで冷やして液体にした約800kgのキセノンを使います。宇宙からやってきた暗黒物質が、ごくまれにキセノンの原子核と衝突。そのときに発する光を捕らえて、間接的に暗黒物質を観測します。▼光を捉える光電子増倍管のすごさ
そのわずかな光を観測する装置は「光電子増倍管」と言います。【この装置は、光子1個でも検出できる優れもの。月から地球を照らした懐中電灯の光さえも見逃しません。】(要確認)この光電子増倍管が、キセノンのタンクを囲むように、642個取り付けられています。
▼ノイズを少なく山の中。まわりには水のタンク
暗黒物質を捉えるのは「ごくまれ」と書きましたが、どのくらい待てば良いのでしょうか。1年間に2、3回当たってくれれば良い方だそうです。暗黒物質はいつ観測できるか分からないので、常に準備万端で待ち構えなければいけません。暗黒物質以外の反応を減らすために、さまざまな工夫をしています。1つ目は、装置の場所です。先ほど登場したカミオカンデと同じ、岐阜県・神岡鉱山の地下にあります。そして2つ目は、キセノンのタンクを取り囲む水タンクです。キセノンのタンクは、直径10m、高さ10mの水タンクの中に置かれます。【水タンクの役割は?】
▼なぜキセノンなのか
なぜキセノンという聞きなれない物質を使うのでしょうか。その答えは、周期表に隠されています。キセノンは、周期表の一番右側の18族の列にあります。この列の元素は「希ガス」と呼ばれ、他の元素とあまり反応しない元素なんです。反応しないということは、キセノン以外の不純物が溶けにくく、純粋なキセノンだけの液体が作りやすいのです。不純物が少ないと、余計な反応が起きにくくなり、暗黒物質の反応がより見えやすくなります。
▼今後の計画
2010年10月に建設が終了し、現在は試験運転を続けています。【今後の計画は?】