村山斉さんQS

経歴

村山斉(むらやま・ひとし)(49)1964.3.21
専門は物理学(素粒子理論)

1986年 東京大学理学部物理学科卒業
1991年 東京大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了
1991年 東北大学 助手
1995年 カリフォルニア大学バークレー校 助教授
1998年 カリフォルニア大学バークレー校 准教授
2000年 カリフォルニア大学バークレー校 教授
2002年 西宮湯川記念賞受賞
    (超共形不変性の量子異常によるゲージーノ質量生成機構)
2004年 カリフォルニア大学バークレー校MacAdams 冠教授
2007年 東京大学数物連携宇宙研究機構(IPMU)機構長

「宙」と「粒」はなぜつながっているのか

ガリレオが400年前に望遠鏡を夜空に向けて以来、
人間は天体からの光を通じて宇宙の謎を解明してきた。
しかし、光がまっすぐ進めるようになったのは、ビッグバンから約38万年後。
宇宙の起源を探る研究は、ここでおしまいなのでしょうか。
宇宙の晴れ上がりまでの38万年間は、人類の永遠の謎なのでしょうか。

人間は昔から、星や太陽の謎を知ろうとする一方で、
地上にある物質の根源について考えてきた。
この世で一番大きいのが宇宙で、一番小さいのが素粒子。
宇宙の大きさは10の27乗m。素粒子の大きさは10の−35乗m。
62ケタもの“距離”がある。

小さな物質を扱う素粒子物理学は、
大きな宇宙を相手にする天文学と別々に発展した。
両者を結びつけたのは「ビッグバン理論」。
宇宙は昔は小さかった。ミクロの世界。
その謎を解くには素粒子の研究が不可欠に。
素粒子の謎をとく上でも、宇宙の研究が欠かせない。

「極大」と「極小」の研究が、同じ答えを求めて進められている。
加速器は、望遠鏡では見られない宇宙のはじまりを観察する「宇宙を見る顕微鏡」。
顕微鏡で宇宙を探り、望遠鏡で素粒子を探る時代。
大きな望遠鏡や粒と粒をぶつける加速器は、タイムマシン

ギリシャ神話に登場する「ウロボロスの蛇」。
自分の尾を飲み込んでいる。
古代ギリシャの「世界の完全性」を表すシンボル。
宇宙という頭が、素粒子という尾を飲み込んでいる。
宇宙の果てを追いかけると素粒子があり、
小さなものを追いかけると宇宙がある。
「天上」と「地上」に違いはない。

暗黒物質は私たちの“産みのお母さん”

太陽系は毎秒220kmの速さで、銀河系を回っている。
なにがつなぎ止めてくれているのだろう?
星の重力もあるが、それだけでは足りない。
望遠鏡では見えない「何か」が、私たちを引っ張っている。
物質があるけど見えないので「暗黒物質」と呼んでいる。
あるとき、捻じ曲げられた銀河の光が見つかった。
暗黒物質の強い重力によって、光がねじ曲げられた。
暗黒物質は奇妙なお化けのような変なもの。
暗黒物質のおかげで原子が集められ、
星ができて銀河ができて、惑星ができて私たちが生まれた。
言ってみれば、私たちの“産みのお母さん”
まだ正体不明なので“生き別れのお母さん”ですけどね。
会ってみたいですよね。

「宙」を見て「粒」を探る

「SuMIRe Project」
暗黒物質の地図をつくる。宇宙の“国勢調査”
①写真を撮る
 宇宙の銀河を何億個も写真に収める。
 超広視野カメラ HSC (Hyper Suprime-Cam)
 画素数が9億、重さが3トンもある。
 すばる望遠鏡の強みは視野の広さ。
 ハッブル望遠鏡の1000倍。
②分光する
 星からの光をプリズムで分けて、色を調べる。
 超広視野分光器 PFS (Prime Focus Spectrograph)


暗黒物質検出装置「XMASS」
液体キセノンを入れた巨大な装置で暗黒物質を“待つ”
鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス
液体キセノン800kgを容器に入れる。
1年間待って2、3回当たったらありがたい。気が長い実験。

「粒」を見て「宙」を探る

大型ハドロン衝突型加速器「LHC」
暗黒物質を地上で“作る” ビッグバンをやり直す
鳴かぬなら鳴かせてみようホトトギス
宇宙の始まりに起きたような反応を、実験室でできるかもしれない。
野尻美保子さんが関わっている

「T2K実験」
茨城県東海村の加速器で生まれたニュートリノを、
295km離れた岐阜県神岡町のスーパーカミオカンデに打ち込む

 研究の夢

宇宙の起源と運命を明らかにしたい。
大きな役割を果たしたのは暗黒物質。
暗黒物質は私たちの“生き別れの生みの親”。
ぜひ会ってみたいですよね。
暗黒物質の正体を明らかにするのが大きな夢の一つ。
暗黒物質は宇宙ができて100億分の1秒のころにできた。
暗黒物質の正体がわかれば、宇宙の始まりに迫れる。
これが私たちの夢。
「私たちはどこから来たのだろうか」
「どこへ行くのだろうか」
人類のの素朴な疑問に迫れる研究テーマ。
ちょっとでも何かわかれば、ワクワクすると思います。

中高生へのメッセージ

SuMIRe projectの観測データは、
今高校生の皆さんが大学院に入るころに出そろう。
宇宙のいろんなことが分かってきたが、
まだまだ分からないこともたくさんある。
謎を調べるのはたくさんの人が必要。
皆さんもぜひ、この戦いに加わってください。

教科書に書いてあることを鵜呑みにしないで、
「これ本当かな?」「何で分かったのかな?」
自分で考えながら聞くことを試してほしい。

どんな意見でもどんどん言うことが大切。
「こんなこと言ったら恥ずかしいな」
「ばかだと思われるんじゃないかな」
そう思わずに、積極的に意見を言う。
それで、だんだん本当のことが分かってくる。
みんなも一緒に考えてください。

Other

数学と宇宙をつなげる思い
IPMUを立ち上げた思い

子どもに伝える大切さ
子どもに伝えるときに気にかけていることはあるか
 疑問から語りだす
 「宇宙はどうやって始まったのだろう?」
 「どういう仕組で動いているのだろう?」
 「星は何でできているのだろう?」
 「どうして、私たちはこの宇宙にいるのだろう?」
 「宇宙は、これからどうなっていくのだろう?」
 宇宙はわからないことだらけ。
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 子どもたちを「宇宙の謎を解き明かす」入り口に導く思いは

自分の息子にはどのように接しているのか
子どもの好奇心に親が寄り添う

世界とのつながり
 宇宙への興味に国境はない。世界とのつながりをどう意識しているか

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