村上春樹・京都での講演


『色彩を~』のファーストドラフト(第1稿)が仕上がったのは一昨年2月。だが、「書き直すのが好き」といい、昨年8月まで推敲(すいこう)し、完成した今年2月まで手を入れ続けた。

『色彩を~』の作中では、リストのピアノ曲集「巡礼の年」やジャズピアニストのS・モンクの曲「ラウンド・ミッドナイト」などが登場するが、話題が音楽へ及ぶと、さらに楽しげになった。

「僕は朝早く起きて午前中に仕事をするが、だいたいクラシックを聴く。寝る前に翌朝聴くレコードを並べるんです。CDは音響がせせこましく感じるので、LPが好き。20代は朝から晩までジャズを聴いた。ピアノは今も弾くので、モンクの曲の難解な和音探しをするのが趣味です。文章を書くことは音楽を演奏するような感じ。文章もそのリズムを使って書くんです。(指揮者の)小澤征爾さんと対談したとき、僕がそう言うと、『文章にリズムってあるんですか?』と驚かれました」

Q.好きな作家は?
「文章がうまい夏目漱石、谷崎潤一郎。それと安岡章太郎。嫌いな作家は川端(康成)、三 島(由紀夫)。生理的にダメ。村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を読み、こんな本を書きたいと仕事を辞め、小説一本にしました」

Q.好きなビールは?
「ハワイのマウイブリューイングカンパニーの缶ビールを飲んだらうまかった」

Q.好きな球団は?
「子供のころは阪神タイガースでしたが、神宮球場の近くに住んでからヤクルトファン。ビールを飲みながら、ライトスタンドで見てます。ボストンに住んだこともあるのでレッドソックスも気になる。でも、元ヤクルトの青木宣親選手がブルワーズへ移籍したので、応援してます」

Q.京都で好きな場所は?
「実は京都生まれ。昔、よく歩いた南禅寺周辺」

Q.趣味のマラソンは?
「30年以上、フルマラソンを走り、今朝も鴨川を走ったら、げたを履いた人に『頑張ってください』と声をかけられ、驚きました。昔、作家のジョン・アーヴィングとニューヨークのセントラルパークを一緒に走ったが、変わった人で『馬ふんに気をつけて』と注意してくれた。85歳までフルマラソンを走りたい」