深海生物の進化

発光

太陽光が届かない暗闇の世界。光を上手に使いこなす進化

①影を消す(カウンターイルミネーション)
  200〜1000mの深海魚のほとんどが、腹に発光器を備えている。
  完全に暗黒の領域となる1,000m以深では、
  カウンターイルミネーションの効果が期待できないためか、
  腹部の発光器はあまり見られない。


②獲物を探す(サーチライト)


  【オオクチホシエソ】眼の下に赤色の光を放つ発光器。暗視野スコープ
   深海では青い光が遠くまで届くので、青白い発光器を持つ生物が多い。
   しかし、オオクチホシエソはは赤い光を放つ発光器を備えている。
   さらに自らの眼も、赤色を感じやすいように進化。
   “赤外線照射装置”と“赤外線感知システム”を備えている
   赤外線の光は、他の深海生物には見えにくい。
   赤い光で、敵に気づかれないように忍び寄り、襲いかかる。
   青い発光器も持っていて、ハイビームのように遠くを見るのに使う。   
   クロロフィル(葉緑素)を持っている。
   クロロフィルをもつ細菌と発光バクテリアが共生し、
   赤い光を放つことができると考えられている。

③獲物をおびき寄せる(ルアー)
  

  【ムネエソ】口の中が光る
   口の中に多数の発光器を持つ。
   光に寄ってきた生物を、えさとしてそのまま食べてしまう。
   敵に見つかると、体をくねらせてうろこの角度を変え、
   敵の目に届かないように光を乱反射させて、姿を見えなくする。


  【Thaumatichthys axeli】
   チョウチンアンコウの仲間
   飛び出した上顎の先に、光るルアーをぶら下げている。
   大きな口を開けたまま、ルアーを光らせます。
   餌となる生物が光に集まってくると、
   ルアーを口の中に折り曲げて、誘い込みます。
   口の中に触れた瞬間、口を閉じて生物を閉じ込めます。
   


④驚かせて隠れる(防御・目くらまし)


  【ガウシア】 青色の発酵液を放ち、数秒後に明るく閃光する。
   動物プランクトン。
   発光タンパク質が、 海水中のNaイオンと反応して発光している。

⑤仲間を見つける(コミュニケーション・求愛)
【ミツマタヤリウオ】
雌雄で眼後部の発光器の大きさが違う。
雄が大きく、雌が小さい。雄が求愛に使う。
雌の体長は50cmほどで、雄は10cmにも満たない。
雄は雌の5分の1ほどの大きさにしか成長しない。
雄は成魚になると、餌をほとんど食べなくなる。
雌を探し、生殖だけにすべてを費やす。
幼魚のころに変わった形態をしている。
目が体長の半分ほども飛び出ている。
成長するにつれて、コイル状に巻かれる。
成魚になるころには、顔にくっつく。
また、腹から糸のように消化器官が伸びているが、
これも成長するにつれて、体内に収納される。

感覚

わずかな光をとらえる進化、光以外の感覚を研ぎ澄ませる進化。

①大きな眼
【オオメマトウダイ】
 目は頭の長さの半分と大きい。

【オオメソコイワシ】

②小さく退化した眼
【ユノハナガニ】

③望遠鏡のような筒状の眼

【デメニギス】
 水深400〜800m。
 眼が大きく、「管状眼」と呼ばれる筒状になっている。
 緑色の球状部分が、円筒形の高感度の眼。
 頭が透明なドーム状の膜で覆われ、内部は液体で満たされている。 
 眼の軸を回転させ、前から真上まで視点を変えられる。
 眼を真上に向け、わずかな太陽光によってできる獲物の影を探している。
 眼のような場所にあるものは、鼻に相当する器官。
 お腹に発光器を持つ。

【ボウエンギョ】

④長い柄の先の眼(少ない動きで視野を広げる)

【ミツマタヤリウオの子ども】
眼が長い柄の先にある。
眼が左右に飛び出している。
体が大きくなると、柄の先が縮んで短くなり、
眼の位置に収まる。
眼が長い理由は、周囲をよく見るためという説があるが、
詳しくは分かっていない。

⑤光を感じる

⑥光を感じる感光板(網膜が発達)

⑦体の表面に大きな孔(獲物の振動を見逃さない)
【オオアカクジラウオ】

⑧長いうろこ(振動や接触に敏感)

【ヒレナガチョウチンアンコウ】
糸のように長くした、ひれのすじを漂わせる。
体のところどころに生えている糸状のものは、側線の感覚孔にある皮弁。
レーダーのように水の流れを敏感に読み取り、
えさを捕まえるのに役立っていると考えられている。
頭に立派な角が生えている

⑨長いひげ(振動や接触に敏感)
⑩大きな鼻
⑪磁場を感じるセンサー(ヘラザメ)

口・胃袋・腸

深海はえさに乏しい。確実に捕獲するために発達した。

①口を大きく開ける

【ホウライエソ】
 体長35cm。水深500〜2500m。
 せきつい骨がバラバラに離れる。
 頭を激しく動かして、大きな口を開ける。
 そのときに、大きな獲物を口の中に通すため、
 心臓や腹部大動脈、えらを後ろ下方に押し下げられる。
 するどい牙を持つ。
 牙に大きすぎる獲物が刺さったときに、飲み込めずに餓死することもある。


【ダイニチホシエソ】
 せきつい骨がバラバラに離れる。
 頭を激しく動かして、大きな口を開ける。


②大きな牙を持つ
【ホウライエソ】

③袋のような口を持つ
【フクロウナギ】
 大きくて伸び縮みする、袋のような口を持っている。
 口の長さは頭蓋骨の10倍ほど。口の上に頭蓋骨が乗っている感じだ。
 大きな口を開けたまま、体を垂直に立てて浮上。
 小さいエビなどを誘い込み、口を閉じて獲物を一気に飲み込む。
 尻尾の先端に発光器があり、
 ルアーのように獲物をおびき寄せている可能性がある。
 http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=INJ5Tk7Nbi4

④胃袋を大きく広げて丸飲みする

【フウセンウナギ】
 英名は「Gulper」“丸飲みするもの”と呼ばれています。
 腹の筋肉が柔らかく、胃袋を大きく広げられる。
 丸呑みした餌を収められる。
 腹が飲み込んだ魚のような形になり、風船のように膨らむ。
 尻尾の先に発光器を持つ。

【クロボウズギス】
 英名は「Deepsea swallowers」“深海の大食漢”。
 自分よりも大きな魚を飲み込むことができる。
 腹が飲み込んだ魚のような形になる。

⑤鳥のくちばしのような長い口を持つ
【シギウナギ】

⑥長い腸で消化と吸収の効率を高める
【ホウキボシエソの子ども】
 体長の5倍ほどの、長い腸をぶら下げている。
 腸が体の外に露出している。
 腸の表面積を広くして、消化と吸収の効率を高めている。

運動

活発に動き回るのではなく、じっと待機して獲物を待つ

①長いうろこで三脚のように体を支える
②長いひげ
③成長せずにエネルギーを節約

防御

①肛門から墨を出す(アカナマダ)
②光る液を出して驚かせる
③体をとげで覆う

①赤(赤はわずかな太陽光の青を吸収して黒く見えるため)
②黒(深海魚の9割は黒い。闇に紛れるため。影は腹部の発光器で打ち消す)
③紫
④透明

発音



発電

シビレエイ科やガンギエイ科が発電する。
攻撃や防御、自分の位置を知る、コミュニケーションなどに使っている。
一度放電すると、充電にかなりの時間が必要。
シビレエイ類は、体の左右にそら豆状の大きな発電器を持つ。
起電力は50〜80ボルト、電流は40〜50アンペアほど。
ガンギエイ類は尻尾の両側に、細長い発電器を持つ。
起電力は数ボルト。

【ヤマトシビレエイ】
【スベスベカスベ】
 ウロコがほとんどなくスベスベしているところから命名





繁殖


浮き袋

高水圧、水圧の変化に耐える進化。

①浮き袋をなくす
②グアニン結晶で浮き袋を覆って頑丈にする
③中身を気体ではなく、脂肪やワックスに置き換える