地球から最も遠い人工物体「ボイジャー1号」




“人類最大の冒険”と聞いて、何を思い出すでしょうか?
私は迷わず、これを思い出します。
「地球から最も遠い距離に到達した人工物体」
孤独な“独り旅”を続ける、無人探査機「ボイジャー1号」のことを。



太陽系の“端っこ”に到達!

ボイジャー1号は1977年、木星や土星などの巨大ガス惑星を探査するために、地球を飛び立ちました。打ち上げから36年がたった現在の地球からの距離は約185億km。なんと光の速さでも17時間以上かかります米航空宇宙局(NASA)は2012年6月、太陽系の“端っこ”に到達したと発表しました。太陽系を脱出すれば、人類初の快挙。まだか!まだか!と、注目を浴びています。
<探査機ボイジャー1号、太陽系脱出か NASAは否定>(朝日新聞2013.3.23)


どのくらい遠いのか、実感できないですよね(笑)上の図は、太陽系の惑星と比べたボイジャー1号の位置です。惑星の大きさは拡大してあります。それでも、水星と金星、地球、火星は豆粒より小さくてよく分かりません(笑)

夏休みの「冒険」を思い出す

私はボイジャー1号の旅を思うとき、自分の幼少時代が頭に浮かびます。あれは太陽がじりじりと照りつけ、汗が噴き出るように流れた夏休みのこと。近所に住んでいた幼なじみと一緒に、自転車を何時間もこいで、見慣れない隣町まで行きました。今となっては大したことない距離ですが、当時の自分にとっては“大冒険”でした。ボイジャー1号の旅は、見知らぬ街へと一歩を踏み出し、馴染みの土地が少しずつ広がっていくときのような「冒険心」を思い起こさせてくれるのです。

絵画のような惑星

木星の大気

ボイジャー1号がこれまでに撮った、惑星の写真を見てみましょう。まず打ち上げから2年後の1979年、木星に到達。トレードマークである太陽系最大の大嵐「大赤斑」や、火山活動を続ける木星の衛星「イオ」などをカメラに収めました。私が一番好きな写真はこれです!(上の写真)「木星の大気」を写したものなのですが、とても惑星とは思えません。ムンクが描いた絵のようで、見入ってしまいます。続いて訪れたのは、巨大な“輪っか”を持つ土星。1980年に到達しました。

木星の大赤斑

火山活動が続くイオ

土星

大きな夢を乗せて太陽系外へ

ボイジャー1号は、木星と土星を観測する当初のミッションを終えました。しかし、実はさらに「大きな夢」を託されて、太陽系の外側へと向かっています!どんな夢かは、また次のお話で・・・。



星間ミッション

1990年2月14日、ボイジャー2号の進行方向の観測を兼ね、
太陽系の各惑星を60枚の連続写真に収める「太陽系家族写真」を撮影した。

太陽風の速度がそれまでの時速112万kmから16万km以下に極端に落ちたことと、
太陽系外の星間物質が検知されたことから、
2005年5月、末端衝撃波面(Termination Shock)を通過していることが判明。
ヘリオポーズが宇宙の磁場により歪んでいることを突き止めた。

2006年8月、100AUの距離に到達したとNASAが発表。
2010年12月13日、観測している太陽風の速度がゼロになったとNASAが発表。
これは太陽圏の端に近づいていることを示しているとしている。
2011年8月20日現在、太陽から約177億150万km(118AU)に到達。
速度は太陽との相対速度で17.056km/s。
NASAによると、2015年ごろにヘリオポーズを脱出して太陽系外探査へ踏み出す。


語句

<末端衝撃波面>高速の太陽風が星間物質との衝突や星間磁場により減速される境界面
<ヘリオシース>低速度の太陽風と星間物質とが混ざり合う領域
<ヘリオポーズ>太陽風が星間物質や銀河系の磁場と衝突して完全に混ざり合う境界面