黒スケ生け捕り奮闘記


 硫化鉄の鎧を身にまとった黒いスケーリーフット、通称「黒スケ」。今回のブログは、黒スケを捕まえるまでの物語を、実際にしんかい6500に乗って捕まえてきたJAMSTECの研究者、宮崎淳一さんの話を交えながら紹介します。

まずはカーリーチムニーへ

調査する場所は研究者に「聖地」とあがめられるインド洋の「かいれいフィールド」。かいれいフィールドは2000年に、JAMSTECの無人深海探査艇「かいこう」によって見つけられた。これまでに8つの熱水噴出孔が見つけられており、今も活発な熱水活動が続いている。その一つが最初の目的地である熱水噴出孔「カーリーチムニー」だ。


 「今まで見たものの中で、一番大きかった」。

 宮崎さんを、そう驚かせるカーリーチムニーとは、一体どんなものなのか。高さ1m、直径80cmの大きな”煙突”から、黒い煙のようにもくもくとブラックスモーカーが立ち昇る。大きく開いた”口”の内側には、鉄と硫黄からなる鉱物の黄鉄鉱(パイライト)がくっついている。潜水船が発する光を反射させ、「まぶしい」と感じさせるほど周囲に輝きを放っている。神秘的な雰囲気を漂わせているが、残念ながらここに黒スケはいない。「温度が高すぎて黒スケが住めないんです」。

マーカーが見つからない!

さあ、いよいよ、黒スケがいるとされる熱水噴出孔「モンジュチムニー」に向かいます。道標となるのは、前回の航海で設置したマーカー。交通安全で使う蛍光反射材のようなものです。しんかい6500の光を反射して、場所を教えてくれるはず!でした。。。

(c)JAMSTEC
ない。。いくら探しても見つかりません。そうこうしているうちに潜水時間が過ぎていきます。宮崎さんは「かなり焦りました」と苦笑いで振り返る。どうやら、イソギンチャクやエビなどで表面が覆われて、光を反射しなくなっていたようです。それでも冷静に船の位置を観測しながら、過去の論文に書かれている位置を見定めて、モンジュチムニーを発見!いよいよ、黒スケさんとの出会いが近づいて来ました!

分け入っても分け入っても白いエビ

そこに現れたモンジュチムニーの姿は、カーリーチムニーとはまったく違うものでした。エビ!エビ!エビ!チムニー全体にエビが群がり、一面真っ白の銀世界です。(気持ち悪いと感じる人もいるかもしれない。見学会では「ぎゃー!」と悲鳴に近い声が上がっていた?)


この無数のエビの内側に、黒スケさんがいるはずなんです。宮崎さん!どうしましょうか?

「邪魔なので、ホースでどかしましょう」。

というわけで、しんかい6500のアームに付けたホースで、エビを追い払います。えいっ!


おぉっ!エビの中からユノハナガニが顔を出しました。しかし、まだ黒スケの姿は見えません。宮崎さん!どうしましょうか?

「ちょっとじゃだめなんで、思いっきりやってください」。

えいっ!えいっ!



おぉっ!何か黒いものが!もしかしてこれが?

「黒スケが10匹、20匹出てきました。ピカピカ光るのですぐに分かります」。

さっそくホースで吸い込みます。2時間ほどで回収した黒スケさんは約90匹。しかし、その3倍以上のエビを吸い込んだそうです(汗)そして、このとき回収された黒スケさんの生き残りが、見学会でお披露目されました。


触覚がかわいい。

エビの紹介

最後に、「エビがかわいそう!」という声が聞こえてきそうなので、簡単にエビを紹介します。名前は「カイレイツノナシオハラエビ」。今回は邪魔者扱いでしたが、実は結構すごいやつなんです。左右の眼がくっついて、背中に広がってるんです!背中に光の受容物質を持ち、熱水から発せられる微弱な光を感じ取っているそうです。


▼データ
 Monju chimney:Kairei Field・25°19.2186'S・70°02.4219'E・2422m