暗黒物質
スイスの天文学者フリッツ・ツビッキーが、1933年に指摘。かみのけ座にある銀河団の総質量を計算した。
光の量から計算した質量と、運動速度から計算した質量を比較。
運動速度から計算した質量の方が、400倍も大きかった。
「光を発さず目に見えないけれど、質量のある物質」がある?
アメリカの天文学者ヴェラ・ルービン。
銀河の回転速度が、中心から遠く離れても遅くならないことを発見した。
(太陽系は秒速約220kmで回転している)
星や中心部のブラックホール以外にも、重力源がある?
その重力源は、中心から離れるほどたくさんある。
「重力レンズ効果」が暗黒物質の存在を裏付けた。
銀河の光が、手前にある暗黒物質の重力で曲げられて、複数に分かれて見えた。
暗黒物質は光を出さず、他の物質と反応しない。
銀河団と衝突しても、幽霊のように通り抜けてしまう。
→暗黒物質の正体は何か?
→暗黒物質はどうやって出現したのか?
暗黒物質検出装置「XMASS」(岐阜県神岡町)【調べる】
初期の宇宙には、暗黒物質の密度が濃い場所と薄い場所があった。
濃い場所に強い重力が働き、原子が引き寄せられて星ができあがった。
ビッグバン理論
ロシアの物理学者アレクサンドル・フリードマンが1922年、宇宙は膨張していると主張。減速膨張と等速膨張。
ベルギーの物理学者ジョルジュ・ルメートルが1927年、加速膨張を主張。
膨張で空間が広がり、宇宙にある物質の密度が低くなる。
そのため重力の影響が弱まり、膨張速度が上がる可能性を指摘した。
アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが1929年、
天体観測により宇宙の膨張を確認。
遠くの銀河の光がどれも、赤方偏移を起こしていることを発見した。
銀河が遠ざかる速度が、距離に比例することを発見。
(遠くの星ほど、速い速度で遠ざかる)
地球からの距離だけでなく、ある銀河同士にも当てはまっていた。
宇宙全体が膨らんでいる!
アメリカの物理学者ジョージ・ガモフが1946年、
「宇宙の始まりは超高温・超高密度の火の玉だった」という説を提案。
初期の宇宙では波長の短い電磁波が出され、現在もその「残り火」があると考えた。
宇宙が膨張して温度が下がり、「マイクロ波」まで波長が長くなっていると予想した。
「宇宙マイクロ波背景放射」と呼ばれる。
アメリカのベル電話研究所(現在のベル研究所)の研究員
アーノ・ペンジアスとロバート・W・ウィルソンが1964年、偶然宇宙背景放射を観測。
アンテナの雑音を減らす研究中に、正体不明の雑音をキャッチした。
2人は1978年、宇宙マイクロ波背景放射の発見者として、ノーベル物理学賞を受賞した。
NASAの天体物理学者ジョン・マザーとジョージ・スムートは2006年、
宇宙マイクロ波背景放射の観測でノーベル賞を受賞。
宇宙背景放射探査機「COBE」(コービー)(Cosmic Background Explorer)を使い、
1989〜1993年にかけて、マイクロ波を精密に観測した。
「むら」「ゆらぎ」を測定。ビッグバンがより確実になった。
NASAのウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機
「WMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)」が、
2001年に打ち上げられ、「ゆらぎ」をより精密に測定。
そのほか、宇宙の年齢が137億年で、宇宙の直径が274億光年以上だと明らかにした。
また、宇宙全体にある暗黒物質の量もわかった。
→小松英一郎・マックス・プランク宇宙物理学研究所所長、IPMU上級科学研究員
ビッグバンで生まれた電磁波のゆらぎが、暗黒物質の濃淡を生み、
銀河が線のようにつながる「フィラメント構造」や、
銀河のない空っぽの部分「ボイド(泡)」を形成し、
「宇宙の大規模構造」を作り上げた。
宇宙の晴れ上がり
ビッグバンから1万分の1秒後で10兆℃。1秒後で100億℃。光は存在するが、飛び交う電子に反応してぶつかり、外に出られなかった。
光がまっすぐ進めるようになったのは、ビッグバンから約38万年後。
宇宙が膨張して温度が下がり、粒子の速度が落ち着いてきた。
電子は陽子に捕まえられて、電荷が0になり、光が自由に直進して解き放たれた。
空を覆っていた分厚い雲にたとえて「宇宙の晴れ上がり」と呼ぶ。
宇宙背景放射のマイクロ波は、このときの光が引き伸ばされたもの。
なので、ビッグバンから38万年以内の宇宙は、望遠鏡では観測できない。
宙と粒の出会い
ガリレオが400年前に望遠鏡を夜空に向けて以来、人間は天体からの光を通じて宇宙の謎を解明してきた。
その努力はここで「行き止まり」。
宇宙の起源を探る研究は、ここでおしまいなのでしょうか。
宇宙の晴れ上がりまでの38万年間は、人類の永遠の謎なのでしょうか。
人間は大昔から、天上にある星や太陽の謎を知ろうとする一方で、
地上にある物質の根源について考えてきました。
これ以上は分割できない物質の最小単位を素粒子と呼び、
性質や力の作用を研究しています。
これはまさに、ビッグバン当時の「極小の宇宙」を研究しているのと同じ。
小さな物質を扱う素粒子物理学は、大きな宇宙を相手にする天文学と別々に発展した。
両者を結びつけたのは、ビッグバン理論。
宇宙は昔は小さかったことがわかり、その謎を解くには素粒子の研究が不可欠に。
素粒子の謎をとく上でも、宇宙の研究が欠かせません。
宇宙の大きさは10の27乗m。素粒子の大きさは10の−35乗m。
「極大」と「極小」の研究が、同じ答えを求めて進められている。
顕微鏡で宇宙を探り、望遠鏡で素粒子を探る時代。
加速器は、望遠鏡では見られない宇宙のはじまりを観察する「宇宙を見る顕微鏡」。
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