1億年、サバ読んでました


この地図に描かれているのは、宇宙ができてから38万年後、
「宇宙の晴れ上がり」直後の宇宙の姿だ。
これまで、宇宙の年齢は137億歳だと言われてきたが、
今回の観測結果から見積もられた年齢は138億歳。
実は、1億年以上も高齢だとわかった。

宇宙望遠鏡「プランク」

ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が2009年に打ち上げた宇宙望遠鏡「プランク」が観測した。とらえたのは、ビッグバンの“残り火”と比喩される「宇宙マイクロ波背景放射」だ。

 宇宙マイクロ波背景放射とは

話は、宇宙が誕生したばかりのころまで、さかのぼります。ビッグバン宇宙論によると、宇宙の始まりは超高温・超高密度の火の玉。光で満ち溢れていました。しかし、光は飛び交う電子と衝突してしまい、まっすぐ進むことができません。

ここで、雲を想像してみましょう。雲はなぜ白く見えるのでしょうか?雲の正体は小さな水滴の集まり。光が水滴にぶつかり、まっすぐに進めず乱反射するために、白く不透明に見えるのです。

話を戻すと、ビッグバン直後の光は電子にぶつかりまっすぐ進めないため、雲がかかったように不透明でした。やがて宇宙が膨張して温度が下がると、ばらばらだった素粒子が結びつきます。宇宙が誕生して38万年、原子核と電子が結びついて原子ができると、光がまっすぐに進めるようになりました。宇宙にかかっていた“雲”が晴れて透明に。この瞬間を「宇宙の晴れ上がり」と呼びます。そして、このときの光は宇宙の膨張にともなって波長が引き伸ばされ、「マイクロ波」として現在も地球に届いているのです!この光こそが「宇宙マイクロ波背景放射」です。ちなみに、宇宙マイクロ波背景放射はテレビや携帯電話のノイズとして、毎日のように受信するほど身近な存在なんです。

宇宙マイクロ波背景放射で見た宇宙地図

バーベキューで炭を温めたことはありますか?パチパチと音を立てて燃え上がる炭は、赤く輝いていますよね?物体は温度に応じた色で輝きます。なので光のスペクトル分布を調べることで、温度が分かります。最初の図は、宇宙誕生から38万年後の宇宙にあった「温度のむら」を示しています。赤い色ほど高温で、青い色ほど低温を表しています。その差はわずか数千分の1℃。しかし、そのわずかな温度のむらが、暗黒物質の密度の濃淡を生み、星や銀河ができあがったと考えられています。


【今回分かったこと】
▼温度のむらが不均一
温度の違いを強調すると、図のようになる。宇宙論の標準的なモデルでは、温度のむらの分布はどの方向でも同じはず。しかし、この観測結果によると、画像の白線の上下で、温度のむらに差があるように見える。また右下には「コールドスポット」と呼ばれる温度が低い領域がある。温度のむらがなぜ不均一になったかは、まだわかっていない。

▼暗黒物質、暗黒エネルギーが占める割合


▼膨張速度が遅くなった(ハッブル定数)



(キープ)
プランク衛生はWMAPよりも細かく見分ける能力(角度分解能)が2〜3倍高い。

【データ】
 宇宙年齢:137.96億±5800万歳
 割合:物質(4.81%)暗黒物質(25.7%)暗黒エネルギー(69.3±1.9%)
 ハッブル定数:67.9±1.5 [(km/s)Mpc]
 宇宙の曲率:平坦
 ニュートリノの種類:3種類


【人】杉山直・名古屋大理学研究科教授
   小松英一郎・マックス・プランク宇宙物理学研究所所長